【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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40: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:44:23.90 ID:oj63shz20
 夏葉は自分の立ち振る舞いを大切にしている人間だ。常に周囲に遠慮しているという意味ではない。夏葉はどんな時も善く在ろうとする心がけを持っている。だから、酔いつぶれたところなど見たことがなかった。

 とはいえ、夏葉も完璧な人間じゃない。そんな人間はどこにもいない。彼女が疲れ果てて眠っている姿など、これまで何度も目にしてきている。

 つまり知りたいのは理由だ。浮かれた気分だった、それで酒がすすんだ。それも間違いではないだろう。だがそれだけではないと、今日までの経験がささやいていた。

「ああ、いや、別に夏葉を責めたいわけじゃないんだ。俺も似たようなもんだしな」
 俺だって結構な量を飲んでいた。酔いは未だに覚めきっていない。

「だけど、その……心配なんだよ」
 嘘偽りない本心だった。それで、夏葉の瞳が揺れた……ような気がした。

 夏葉が天井を見上げた。そのまま二、三度またたきをする。しばらく目をつむって、それから、夏葉は観念したかのように笑った。

「ひょっとしたら、不安を感じていたのかもしれないわね」
 それはまるで他人事のような口調だった。

「あと何回あるんだろう、って数えていたの」
「何回って?」
「お祝いの回数よ。果穂も、あと二年で大学を卒業するわ」

 言葉の意味がわかるより先に、ゾクリとした感覚が背筋を走った。遅れて思い至る。お祝いの回数とは、すなわち節目の回数だ。

 放課後クライマックスガールズで、これまで何度もお祝いをしてきた。アイドルのことなら、大きなライブの成功だったり、オリコンで新記録を達成したりした時に。それ以外のことなら、今日のような成人の時や、学校の卒業の時などに、何度も。

 そして、節目とは時間の経過の上にある。時間の経過は否応がなく、来たるべき終わりを意識させる。アイドルという夢の終わりを。



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