【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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9: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:24:07.36 ID:oj63shz20
「そういうアナタがたまに心配だったわ。気持ちがわかる、ってそういうことよ。きっと私たちは、お互いのずれた部分を意識し合っていたんじゃないかしら」
「ずれた部分、か」

「だからこそ噛み合っていたとも言えるわね。少しのずれが在るおかげで私たちは噛み合っていた。アナタの黙々とした努力を見て、私だってまだまだ頑張れるはずよ、っていつも自分を鼓舞していたわ」

 脳裏にかっちりとした蒸気機関の歯車が浮かんだ。
 たしかに夏葉の言う通りかもしれない。俺も同じだ。夏葉の情熱にあてられて、それに見合う人間にならねばと自分を奮起させてきた。夏葉の論は的を得ている気がした。

 ならば夏葉の自分に対する評も、案外客観的な真実なのかもしれない。すなわち自分に対して頓着しない人間。努力を手段と割り切れてしまう人間。

「そういえば……」

 ふと、どこかで似たような評価を受けたことがある気がした。「おまえは現状に対して割り切りがよすぎる」と誰かに言われたのだ。あれはいつのことだったか。視線をさまよわせて記憶をまさぐる。

 壁に貼られている就職説明会のビラが目に入ったところで記憶が繋がった。

「『男というのは結果主義に囚われやすいものだ』……って言われたことがある」
「誰によ?」
「社長だ。天井社長。283プロダクションに入る時に」

 夏葉と出会う半年前に、俺は天井社長に拾われて今の事務所に入った。もう九年半前ということになるのか。ぴしゃりとした言葉を投げかけられた記憶が蘇ってきた。

「……そういうアナタの昔話って、あまり聞いたことないわね」
「そりゃ俺の昔話なんて面白いことないからなあ」
「なら、いい機会じゃない?」

 夏葉は足を止める。ちょうどよく隣の建物には学食が入っていた。興味津々と言った夏葉の目が俺を見つめている。

「いや、しかし……」
 断ろうと言葉を濁す。改まっての自分の昔語りなど気恥ずかしくてしょうがない。そう考えると同時に、俺の腹の虫が鳴る。「決まりね」と夏葉が満足げに頷いた。



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