タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7
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名無しNIPPER
[sage]
2020/10/07(水) 22:29:02.53 ID:gu9172850
>>137
「廃人の街」
ピカピカの石鹸みたいなモノレールが、清潔な面持ちの労働者を乗せ、ウエハース風のビル群へとゆっくり滑っていく。その窓は浅葱色の摺りガラスで、車内から眼下を伺うことも、外部から内部をさぐることもできない。そこに乗っている彼らの姿を想像することは、モノレールを見上げるダウンタウンの人々の娯楽とはなり得なかった。すでに絶望的な状況に追い込まれているダウンタウンでは、成功者をコケにして笑うことは、あまりにも心の余裕と逼迫感を求めるものだった。ダウンタウンの人々は、逼迫した生活すら失われた頽廃的な日々を、合法の概念すらない快楽を自堕落に求めて生きていて、それ故に心の余裕などあるはずもなかった。
彼らは頭上を走る、ほうき星のようなレールを見て、嫉妬心を抱くことを見越して建てられたと思うだろうか? 決してそんなことは考慮されていない、と彼らも、それを建てた行政府すらそう答えるだろう。そのように両者とも彼らを無視し、濁った茜色の底へ沈めているのだ。滅多に拭かれない赤塗れの体の酸っぱい異臭が充満し、ところどころで出しっぱなしで洗い流されずに残る精液の臭い、質の悪い煙草の脂と適当に混ぜ合わされた粗悪な麻薬が溶け合う唾液の臭いが、彼らの窪んだダウンタウンを猖獗し、いっそう彼らを不健康に落とし込める。
彼らの多くは、生まれついてのDowntownerだ。ずっと、劣等地で育ち、劣位の人々の価値を内面化し、腐臭を纏い続けている。また、その空気の中に押し込まれる、ウエハース風ビル群の元労働者は、誰も彼もがひと月も経たぬ間にその雰囲気にのまれ、生まれついてのDowntownerと見分けがつかなくなる。それを知っていて、行政府は手出しをしない。頽廃したままでいてくれれば、彼らの生活支援さえしておけば文句が出ないのだから。それは誰もが知っている。誰も這い上がらない、その力のない廃人しかいないから、そのダウンタウンは廃人の街として延々瀰漫し続けるのだ。
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