渋谷凛「これは、そういう、必要な遠回り」
1- 20
12: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/08(日) 21:04:55.70 ID:clFucneV0



明朝、がらがらがらがらと響く重い音で目が覚めた。

寝過ぎてしまった。

アラーム、設定していなかったっけ。

もぞもぞと枕元を探るも、携帯電話は見当たらない。

昨日は帰宅してからお風呂に入って、そのあとすぐに疲れて眠ってしまったので、あまりベッドに入ったときの記憶があまりない。

まだ閉じる気でいる瞼を気力で押し上げて、上体を起こす。

時計を確認せずとも、時間はなんとなく察しがついた。

がらがらというさっきの音は、花屋になっている自宅の一階のシャッターの音で、シャッターが上がるということは開店の三十分くらい前ということだからだ。

視線を自室の床の上に移す。

中央に配置してある犬用ベッドの上を見れば、そこにはもう愛犬であるハナコの姿はなかった。

あー、しまった。

お母さんがご飯あげてくれたのかな。

申し訳ないな。

完全に起き上がり、自室を出る。

階下のリビングに行くと、そこには母とハナコがいた。

「おそよう」

「……うん、ごめん」

「ハナコのお散歩、行ってあげてね」

「うん。ハナコもごめんね」

「珍しく疲れてるわね。昨日、お友達と何かあった?」

「んーん。何にもないよ、ただ帰り道でちょっと、いろいろあってさ」

「危ない目に遭ってないでしょうね」

「うん。それは大丈夫。困らせるようなことも、私が困るようなこともないから」

「なら、いいんだけど」

「あとで詳しく話すよ」

「ええ。聞かせてね」

母との会話のあと、そのまま洗面所へ行き、顔を洗って寝癖を軽く直す。

いつもならこの時間には既に回っているはずの洗濯機を見れば、口を開けて沈黙していた。

おそらく、私が起きてくるのを待っていてくれたのだろう。

寝間着を洗濯機へと押し込んで、洗剤を入れ、スイッチを押す。

ごうごうと音を立てて動き出したのを確認して、私は洗面所をあとにした。

再び自室へ戻り、手早く私服へと着替えを済ませリビングへ行くと、「ようやくね」という顔をしたハナコがソファの上で大きく伸びをしていた。

「ごめん、ハナコ。おまたせ」

声をかけると「本当に待ったわよ」と言いたげに私の顔をじっと見て、それから軽やかにソファからリビングの絨毯の上へ着地した。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
50Res/83.42 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice