逢坂大河「たまにはいいのよ、たまにはね」
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7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:44:19.05 ID:VkxCchnrO
「……どうしよう」

その日の深夜。
スヤスヤ寝息を立てる母の隣で私は切られた前髪を弄りながら悶々として眠れなかった。

「パパ、カツラとか持ってないかな……」

まるでうわごとのように呟き、ノロノロ起き上がり一縷の望みにかけて両親の寝室に向かう。
父、竜児は別にハゲてない。さぞ心外だろう。
けれど、転ばぬ先の杖ということわざもある。
将来を見越して、転ばぬ先の杖ならぬハゲぬ先のヅラを今から用意しているのではないか。
そう考えて寝室に忍び込むと父は起きていた。

「どうした、松姫」
「パ、パパ……お、起きて、たんだ……」
「お前、その髪……」

よもや起きているとは思わず、驚いた私は切られた前髪を隠すことを失念して、見晴らしが良くなった視界でばっちり父と目を合わせた。

「大河の仕業だな?」
「う、うん……ママにやられた」
「まったく、あいつは本当に無茶苦茶だな」

期せずして告げ口したような形となったが、父は呆れつつも無茶をした母に憤ることはなく。

「でも、俺もその方がいいと思うぞ」

パパはママに甘い。それとも私に甘いのか。


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