19: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:01:34.09 ID:CDwt0mRk0
  
 「ううぅ……」 
  
  シャツの裾を掴む。 
  世界は針の筵だ。その中にあって、掛布団だけが、なによりも優しい。柔らかくぼくを抱きしめてくれる。 
  
  ひとしきり泣いて、気が付いたら寝ていて、顔は涎と涙と洟水でぐっちゃぐちゃ。 
  枕は吹っ飛んでいる。ぼくの顔があったあたりに、顔から流れた体液のまぜものが沁みついていて、饐えた悪臭を放っていた。 
  身だしなみを整えるよりも先にお腹を満たさないとならない。そんな使命感にも似た焦燥感にあおられて、部屋に備え付けの小さな冷蔵庫を開く。 
  
  なかった。なにも。 
  と、倒置法を思わず使ってしまう程度には、絶望的なその中身。 
  半分くらいになったサイダーと、ポッキーが一袋、少ししなびた林檎、あとなぜか靴下の片方。なんでこんなことになっているんだろう。ぼくは靴下を食べるつもりだったんだろうか? 
  
  
41Res/36.99 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20