22: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:04:17.98 ID:CDwt0mRk0
「謝らなくていい、堂々としていろ。……いや、たまには謝ったほうがいいか」
そうしてぼくの頭へと、まだ値札も切っていないキャスケット帽をぽすんと乗せる。えせ鼈甲縁の伊達眼鏡も一緒に手渡された。
「明日のレッスンは十時からだぞ。朝のな。寝坊すんじゃねーぞ」
「最近はちゃんと時間通りに来てるじゃん」
「そうだな。いいことだ。トレーナーも涙を流して喜んでた」
「うっそだぁ」
「本当だからな」
「……あはは」
誤魔化すように笑う。いくら遅刻しても、終わりの時間は決まっている。だからと言って内容を短くもできない。必然的に、密度は濃いほうへ濃いほうへと進んで、ぼくはもうあんな地獄は味わいたくないのだ。
「頑張れよ」
と、Pサマは短く、けれど万感の思いを込めて――っていうのは自惚れかもしれない。無愛想なイケメンが笑うだけで、動悸が激しくなってしまうぼくのメンタルは、別の意味でもまたクソザコだった。
キャスケットの目庇を少し下へと向け、太陽の日差しを遮る。
Pサマの煙草の匂いがまだ残っているような気がした。
* * *
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