37:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:58:51.70 ID:O0jAO63X0
 ――期限の晩、美里恩村 長老の家 
  
  
 ひなた「……」 
  
 長老「……」 
  
 村人J「ひなたや、何も言わんでもわかるな。鬼を退治するのをやめるよう、エミリー殿を説得するんじゃ」 
  
 ひなた「……」 
  
 村人K「どうしたひなた。返事をせんか」 
  
 ひなた「長老……みんな……悪いけど、あたしにはそれはできないべさ」 
  
 村人L「な、なんじゃと!?」 
  
 ひなた「蘇芳童子の蘇芳の染め物は、美里恩村の名物だべさ。10年前、兄ちゃんが喰われたときに作られた染め物は今も売れ続けて、だからあたしらは今日もどうにか暮らしていける」 
  
 ひなた「お前の兄ちゃんは村のみんなの英雄なんだって、みんなそう言ってあたしや家族を励ましてくれてきたよね」 
  
 村人M「ひなた……」 
  
 ひなた「あのお伽噺が広まったおかげで、色んな地方の人が染め物を買ってくれてる……美里恩村のことも鬼のお伽噺の村だって知ってもらえてる。お話に感動したって言ってくれるお客さんもいるべさ」 
  
 ひなた「でも、どんなに染め物が売れても、お伽噺が有名になっても、みんなそれしか眼中にない。誰も兄ちゃんのことを知らないし、知ろうともしてくれないんだ」 
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