128:名無しNIPPER[saga]
2020/05/06(水) 22:43:39.40 ID:EfLG+Erp0
  
 事前のリサーチによれば、あの場所は何と『天国に一番近い島』。 
 なら、遥か空から見下ろしている自分達は、もう天国の住人だったりして。 
  
  
 機上で縁起でもない事を考えながら、 
 加蓮は先程までの夢うつつで覗いていた、懐かしい記憶を振り返ります。 
 そういえば久しく母のナポリタンを食べてないなと気付いて、 
 気付いたところでしばらくは食べられそうにありませんでした。 
  
  「卯月は海外旅行ってした事あるの?」 
  
  「はい! 今回で四ヶ国目ですね」 
  
  「おー、流石は島村家のご令嬢」 
  
  「ふ、普通です……よね?」 
  
  「ふふ……どうだか」 
  
  
 今なら分かります。 
  
 万が一の事態も考えれば。 
 加蓮の身体を慮れば。 
 例え連れて行きたくとも、加蓮を海外へ連れ出す訳にはいかなかったのだと。 
  
 パスポートを取りたい。 
 そう告げた時のひどく驚いたような父の顔を、加蓮はまだ覚えています。 
 テレビのリモコンを握ったまま目を閉じ、 
 静かに返された、そうか、という言葉も。 
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