黒埼ちとせ「メメント・ウィッシュ」
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21:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/11(木) 19:59:13.10 ID:fM9nM/xA0
 それでも、俺は。
 俺の身体はまだ、涙を流せてはいなかった。できることなんて、ただ三十六度の熱を持った壁になることぐらいだった。
 神様に祈ったことは何度もある。だけど、今回は特別だ。
 もしも。もしもだ。定量化されることを、価値と無価値に分けられることをあんたが否定するのなら、俺がこうしていることにも、何かの願いや祈りが、そこに込められた意味があってくれるのだろうか。
 巷に雨が降るように、と、昔の詩人がどこかで言った。その通りだと、そう思う。なら、俺の心に溢れているものは、どうやったら外に出てくれるのだろうか。
 大丈夫。わからないまま、何の気休めにもならないとわかっていながら俺は、俺たちは繰り返す。かくあれかしと、そうでありますようにと、祈るように何度も、何度でも。


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