【ガルパンSS】沙織「彼女のうたかた」エリカ「ある日の喫茶店での出会い」
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8:名無しNIPPER[saga]
2020/07/03(金) 01:10:08.20 ID:a4T5KC6j0


すると、会話を切るように逸見さんはアイスコーヒーに口を付ける。

黒くて冷たい液体が彼女の中に流れ込むのを、崩れる氷の音色が彩る。

そして逸見さんはグラスを置くと、じっと何かを考えるように黙り込む。


1分、いやきっと10秒にも満たないだろう。

静寂が引き延ばした時間は私に緊張感をもたらす。

途切れた会話の糸端を探そうと私が口を開いた時、逸見さんが静かに声を出した。


「……私がたまに一人になるのはね、息継ぎしたいから」

「え?」

「学園艦にいる時の私はずっと海の中にいるの。深くて広い海の中に」

「……」


随分詩的な表現。

私が言ったらきっと笑われるだろう。

だけど彼女の容姿とその声色が、その詩を嘘っぽくなく、安っぽくない。確かなイメージを私にもたらす。


「その海の中を泳ぐのは楽しいわ。自分でその海に飛び込むことを選んで、自分の力で泳げるから」


人魚。そう人魚だ。

海の中を、逸見さんは泳ぐ。

今の彼女のように嬉しそうに、楽しそうに微笑みながら。




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