【ガルパンSS】沙織「彼女のうたかた」エリカ「ある日の喫茶店での出会い」
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9:名無しNIPPER[saga]
2020/07/03(金) 01:10:44.14 ID:a4T5KC6j0


「その海を仲間と共に泳ぐのは楽しいわ。同じ志を持っていて、同時に競い合うライバルで。その子たちがいるから、私も負けてられないって頑張れる」


それはきっと紛れもない本心で、彼女が彼女足り得る柱の一つなのだと、その微笑みで確信できた。

だけど、その表情からふと笑みが消える。

代わりに彼女の顔を苦悩、あるいは諦観のような表情が覆っていく。


「でも、どんなに好きでも、どんなに楽しくても、どんなに頑張ってても。酸素が欲しくなるの。海からでて、大きく呼吸したくなるの」


喉が詰まったように逸見さんは声を無くす。

それを無理やり押し流すように、声を出す。


「苦しくて、苦しくて。自分の吐いた泡(あぶく)さえ掴もうと手を伸ばす。そうやって限界になった時。私は、一人になるのよ」

「……」

「たぶんきっと、普通の人はそんな事無いのでしょうね。日常の中でちゃんと息抜き出来て、私みたいに必要に駆られて休息するなんて事無くて。一人で過ごすのはただそんな気分だからってだけで」


先ほどの穏やかなものとは違う自嘲するような笑み。

締め付けられるような胸の痛みを覚える私をよそに、逸見さんは視線を窓の外へと移す。


「さっきね、遠目にうちの学校の生徒が見えたのよ」


そう言って羨ましそうに目を細める。

そこにはもう人影は無くて、だけど逸見さんの瞳には先ほどの光景が焼き付いているのだろう。


「友達と一緒に、楽しそうにお喋りしながら。きっと知らない街を楽しんでた」


それは、普通のことだ。

誰もが当然のように、当たり前のように。

友達とお喋りをして、遊んで、一緒の時間を過ごす。




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