アルコ&ピース平子「夏の概念と夢の国」
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11: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:39:12.19 ID:qUczw4Pjo



8月31日もやっぱり暑かった。今年も結局、日中は最高気温35度をマークした非常に暑い日だった。こういう時には、室内での仕事が多い自分の現在をありがたく思うことがある。
実際のところ、もっと厳しい体当たりな現場も多数存在しており、この8月もあらゆるところで体を張ったり汗まみれになったりはしていたのだが、それでもたまにはとは言えどこんな太陽の上った暑い時間帯を涼しいスタジオで過ごせるのはツイている。夏の長所であり短所でもある熱射には弱い。

「お疲れ様です」

色々仕事を片付けたら、すっかり夜だ。どっぷりと日は暮れて、気温は20度前後というところか、まあ過ごしやすいくらいに落ち着いている。だからといってどこかに出かけに行くわけでもない。
仕事が終わったら、家に帰らない理由がないからだ。
この世の誰よりもっとも愛すべき妻と、ふたりの間に生まれてくれた可愛い子が2人、俺の帰りを待っている。いわば愛妻家で子煩悩、イメージがひっくり返ればたちまち地獄に落ちそうなワードが脳裏に浮かぶ。だって本当に好きなんだから、大切なんだから、仕方がないじゃないか。
嫁はいつ見たって最高の女で、最強の妻で、誰にでも自慢の出来る愛しい存在。そして、その彼女がこの世に産み落としてくれた宝である息子と娘。とても良い子に育ってくれた。俺には勿体無いくらいの最高の幸せがあった。
だからこそ、だからこそだ。
───好きなものと好きなものはかけ合わせたらもっと好きに決まっている。
つまり今日、子供達にとしまえんの最後を見届けてやらせたかった。けれど、無理な話だ。そもそも俺に仕事が入っていて時間帯も合わなかった。それならその前に滑り込みで前日にもう一回、と思ったがやっぱりチケットはキャンセルも出なくて行けそうにもなかった。

ツイてないなぁ。なんて、短く落胆してから車に乗り込み、自宅へと急ぐ。

これはいわゆるあるあるというか、なんでかはわかんないけれど、急いでいる時に限ってどうしてだか、普段よりも帰りに時間がかかっているように感じることがある。ない?俺結構あんだけど、ない?
まさにそんな感じで、その日はやけに道が長い。おかしいな。こんなに長い直線道路なんて、近所にあったか?
……なんて思い時計を見ると、いや、本当に時間が経過していて、普段なら既に到着していておかしくない時分になっているじゃないか。
なんだ?なにか、道を間違えたのか?いや、そんなはずはない。普段から幾度となく通った道だぞ、それをちょっと気が緩んでいるからと言って、まさか間違えるとは思えない。


そうして、そこまでになって、初めて俺は気付いた。


「ここ……どこだ?」

外は全く見知らぬ景色になっている。
さっきまでは、ずっと知っている道だったはずなのに!一体どこなのだが全くわからない。来たことがない、というかどうやって来たかの方がわからないくらい、本当にその風景に心当たりがなかった。
恐ろしくなって、アクセルを踏む足をブレーキに切り替え、その場に停止する。息を殺して外を見つめる。気密性の高い室内に、いつもなら心地の良いエンジンの低い唸り声が響き渡る。
どうする、どうする?ケータイを取り出して、ここがどこだか検索するのが先か、それとも?思考を巡らせる。



突然、全てが真っ暗になった。





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