アルコ&ピース平子「夏の概念と夢の国」
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18: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:59:32.05 ID:qUczw4Pjo
ずっと走っていった先に、突然開けた場所が出てきた。まるで広場か何かのように見える。
地面が不自然にごろごろとした岩ばかりになり、車も多少揺れながら走っていくほどである。万一のことを考えて道を塞がないよう少し車を走らせ、広場の中央辺りに車を停める。
周りにはおかしなものは何もないように思えたし、特段変わったことはなさそうだ。それでも、なんだか全身がざわついた。車を降りると8月にしては寒すぎる風が吹き、酒井が寒そうに二の腕を擦った。8月とは思えない風なのは仕方がない、だって今の世界には夏がないんだから。
だったら取り戻さないと。

夏も。思い出も。俺も。
何もかも。

だけど、ここまで来たけどどうしたらいいんだろう。俺は気を失っていただけだったし、何をどうしたらいいのかまで考えていなかった。
うん、うん。何回か頷いてみるが解決策は浮かばなかった。そもそもここに来たからと言ってすべて解決するかどうかも分からなかったのに、来たことすらも無駄だっただろうかとちょっと悩む。

「ん?」

ふと、そんな何もないだだっぴろい山のど真ん中だってのに、何か聞こえた気がした。水の、音?


ばしゃーーんっ!


と、何か重いものが、水の張られた場所に突っ込んでいくような音がした。

「ウォータースライダーだ」

確信があった。間違いなくウォータースライダーで遊んでいる音だった。なぜそう思ったのかについては説明が難しいのだが、確実にそうだという自信だけが妙にあった。
ウォータースライダーであっても、仮に違ったとしても、それがどうしてこんな山の中で聞こえてくるのだろうか、不思議に思って辺りを見回す。何もない、建物の一つも見つからない。
それでも確かに音がした。何かを探す俺の姿を不審がって酒井がほのかに震えたが、すぐにはっとしてこちらに駆け寄る。

「なんか見つかりました?」

「水の音がした」

「え?水?」

「何言ってんすか、水なんてどこにも……」

今までさんざよくわからないことが起き続けているんだ、山の中で水の音が聞こえるのもおかしなことではないかもしれない。と、何か言いかけて。
世界が突然、まばゆい光に包まれる。隣に立っていた酒井どころか、自分の指先の輪郭すら見えなくなってしまうくらいの強烈なライトが全体を照らして、空間を消し去っていった。

「何、これは───」

隣にいたはずの彼を呼ぶが、その声ももうどこかに消えてしまって、そうして視界も思考も真っ白に染まっていき。

ぷつん、と。

突然電源が落ちたみたいに、意識が闇に落ちた。





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