アルコ&ピース平子「夏の概念と夢の国」
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20: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/27(木) 00:05:30.77 ID:b25Vyfuyo
「マッッッッッジでムカつくなアンタ!殺していい!?」

「ええ?なぁに、そんな怒ることねえじゃん……いてーな、殴るなよお前」

「いやアンタ自分が何してんのか分かってんの!?」

「あ?そら、としまえんでこうして終わらない夏を享受してんだって……」

「1年だよ1年!」

「……、……………え?」

「終わんない夏?エンドレスとしまえん?もう平子さん、1年楽しんじゃってんのよ!つかそのくらい体感で感じねぇかなぁ、バカじゃねぇんだから!」

硬直、フリーズ。
その長い時間を知らされて、平子は驚きと同時に立ち上がりもせずに呆然としていた。まさか、そんな、みたいな言葉が口から漏れ出したが音にならずにその場に消えていく。
信じられないんだろう、本当に、まさかエンドレスっつったって、終わらないってそんなに終わんねえのかよと。俺、そんなに遊んじゃってたんかいと。

幻想に誘われた挙句、童心の自分と理性の自分を切り離して、世の中から夏まで奪っといて、そこまでした元凶だってのに呆けた顔してぺたんと座り込んでいる。いや、彼が本当に犯人かどうかは微妙なところだが、それでなくとも彼が戻らなければ夏も無いわけで。

「俺、そんなに……」

「そうすよ!ばーか!」

じゃあどうしてこんな世界が成立したかって、その根本には『としまえんは永遠不滅のものだろう』という強い熱意と思い込み、そしてきっと耐え難いほどの無念と願望があったからだろう。
ひとりどころじゃない、きっとこの楽園にいる人々は皆同じようにこの幻想を選び取ったのだ。
わかっているんだ、皆本当は、全ては幻想なのだと。
それでも、終わってしまうみたいで、終わらせたくなくて、自分の思いを捨てきれなくて、だから天秤にかけた願望が現実を上回ってこんな場所を形どったのだ。



「でも、ここ出たら、としまえんが消えちゃうから……本当に……なくなってしまうみたいで、終わっちゃうみたいで……それ、やっぱ受け入れられなくて……」



かたちあるものはいずれなくなるさだめ。
抗う者たちの最後の拠り所。
言葉には魂が宿るというが、そんな言葉遊びみたいなものに最後に縋って、そうしてなんとかこれを実現させたなんてさ、それってちょっと面白い話かもしれない。八百万の神々の誰かのいたずらか、それとも夏が見せた陽炎の如き何かか。
あるいは、狐につままれたのかもしれない。いや、『つままれた』と言うか、誤記と知ってあえて使うが、『狐につつまれた』のかもしれないな。幻の楽園に、つつまれたのかもしれない。

「思い出だけじゃ辛すぎるってか!?じゃあ残された俺のことも考えてよ!」

「それ、は……!」

「俺だけじゃねえわ、アンタのこと信じてるいろんな人ののこと、さ……考えてくれって!」

「分かってんだよ、いやね、分かってんだけどぉ」

「分かってねえじゃんかよぉぉぉぉ!!」

「だっ、から分かってるって言ってん、いって、痛い痛い殴るなバカ!!」

目の前で大乱闘が始まった。それをやれやれと見ているしかない。その乱闘騒ぎや凄まじく、周りの客もいよいよ心配そうに集まって彼らを見にくるくらいだった。
これが収まれば大団円なのか?いや、そうなってくれなきゃ困るんだけれど。なんにしたってこのままじゃいけないと、彼らは理解しているはずなのだから。

彼らの帰るべき世界はここではないのだから。
彼らは彼らのある場所に戻るべきだから。

だから。


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