8: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:35:13.40 ID:qUczw4Pjo
だから、としまえんだって、いずれなくなる。
普通に考えたらそうなんだろう。だけど、なぜだか俺はそんな当たり前のことを忘れていたのだ。いや、分かっていたとしても『としまえんは別』だと勝手に思い込んでしまっていたのだ。
だって、終わるわけがないと思っていた。未来永劫のものだとつい思っていた。むしろそうであろうと信じて疑うことは無かった。
としまえんが無くなるはずなんてないって、未だに実感湧かなくって、意味分かんなくて、全く理解できなくて、信じたくなくて。
だけど、としまえんだって、なくなるのだ。
それが俺が生きている間かそうでないかだけの違いであって、この夢の空間はいずれ無くなってしまう運命なのだ。ろうそくの火のように、使いっぱなしの蛍光管みたいに、いつか消えるものだ。
かたちあるものはいずれ失われる。悲しいことだけれどそれは自然として当然のことなのだから。
分かってはいる。受け入れられるかどうかは別として。
だから、別れを惜しんで俺は言ったのだ。
いや、今にして思うならば、言ってしまった、と表現するのが正しいのだろう。
「としまえんは、夏の概念なんだよ」
「は?」
「あのね、としまえんが夏なの。わかる?」
「や、ちょっ……と、意味がよく分かんないすね」
ドヤ顔で俺は言う。
「としまえんが無くなるってことは、東京から夏が無くなるってことなんだよ」
なんで分かんねえかなあ、この感じが。
厳しすぎる夏をあの空間で迎える喜びと、切なさと。それが二度と失われてしまうという事実と、絶望と。それらがないまぜになって、どうしようもなく悲しくて仕方がなくて、そんなことを謎の論調で語ったのだ。
お前だって一緒に行った時、見たこともないような笑顔で眩しい笑顔で流されてっただろ?ほら、やっぱあそこは楽しいんだよ、一緒に浮き輪で浮かんだ思い出を思い出せ。そうやって噛み付いた。
そこで終わっておけばよかったんだろう。
その日のよる、どうしてもどうしても悲しくて。
───深い意味はない。理由なんてないけれど、チケットを取れなかった哀愁と、俺の代わりに行ける人への羨望と、ちょっとの負け惜しみを込めた言葉を、140字の短文に乗せてインターネットに放出した。
締めに『こうなったらもう、僕自身がとしまえんだ』と記して。
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