22: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/23(水) 13:59:52.81 ID:XcMjEo+hO
  なりたけのために津田沼に向かうか、一分ほど本気で悩んだ結果、結局千葉駅を選ぶことにした。冷静に考えてこの時間からなりたけはヤバい。少しずつ血糖値とか気にするようになってから、余計になりたけが悪魔的に見えてきたのであった。もう若くねぇんだもんな、俺。悲しいなぁ……。 
   
 「適当にマックかサイゼで済ませるか」 
  
  腕時計を見れば三時を回った頃。何かしら腹に入れて、適当に時間を潰せば、それなりの俺の休日の出来上がり。ちなみに最低な時は部屋から一歩も出ずにオールゲームである。それはそれで悪くない。 
23: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/23(水) 14:00:20.28 ID:XcMjEo+hO
  目を疑った。 
   
  思わず目を逸らし、そしてもう一度その方向へと視線を移した。 
   
  間抜けな声が漏れてしまったことにも気づかず、無意識に足が止まっていた。俺のすぐ後ろを歩いていたらしい誰かがぶつかってきて、舌打ちをして追い越していったが、そんなことも意識の外だ。 
24: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/23(水) 14:00:49.85 ID:XcMjEo+hO
  心臓がうるさい。何をこんなに動揺することがあるだろうか。 
   
  昔付き合っていた恋人を街中でたまたま見かけた。ただそれだけだ。 
   
  別れてから数年ぶりに目にした彼女は、さらにその容姿に磨きがかかっていて、自分と一緒にいた頃よりもより大人びて見えて、単純な距離よりもずっと果てしない遠さを感じさせる。 
25: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/23(水) 14:01:26.41 ID:XcMjEo+hO
 「あ……」 
   
  紅茶が何かの入ったカップを二つ手にした、なかなか格好いい男が片方を彼女の傍らにそっと置く。そのカップに気づくと彼女はニコリと微笑んで何かをつぶやいたあと、再びパソコンの画面に視線を戻す。 
   
  あぁ、そうか。そうだよな。 
26: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/23(水) 14:01:53.31 ID:XcMjEo+hO
 「なんだ、小町か。何してんだこんなところで?」 
 「質問に質問で返すってホントにゴミいちゃんだね……。小町はショッピングだよ!」 
 「すまん。ちょっとびっくりしてな」 
 「あー、可愛い妹に突然呼ばれて運命感じちゃった? あ、これ小町的にポイント高くない?」 
 「それ自分で言わなきゃ高いんだけどなぁ……」 
27: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/23(水) 14:02:20.27 ID:XcMjEo+hO
 とりあえずここまでです。 
28: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 17:57:59.97 ID:P7mZ3r8kO
 『ちょっとどっか行くか』 
 『えっ? 声かけなくて、いいの?』 
 『話しかける理由なんてないだろ。今はもうただの他人だしな』 
  
 「えっ」 
29: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 17:58:27.81 ID:P7mZ3r8kO
 ―― 
  
 ―――― 
  
 「お兄ちゃん、何にするの?」 
30: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 17:58:54.84 ID:P7mZ3r8kO
 「……ちゃんと話したことなかったか?」 
 「流石の小町もあんな状態のお兄ちゃんに聞けないよ」 
 「えっ、そんなに俺落ち込んでた?」 
 「滅茶苦茶暗かったよお兄ちゃん……。自覚なかったんだ」 
  
31: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 17:59:22.60 ID:P7mZ3r8kO
  だが、俺もあれをどう言葉にすればいいのか、わからない。 
  いくつもそれらしい単語は浮かんでくる。だけどもそれらは全てあまりにもチープで、そんな単純な話じゃないんだと否定したくなる。 
   
  雪乃と過ごしたあの最後の数週間。その時間を、空間を、感覚を、声に出して形容するのはきっと不可能だ。 
   
32: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 17:59:51.30 ID:P7mZ3r8kO
 「約束?」 
  
  小町は予想外の単語に困惑の色を示す。頭の上にクエスチョンマークが浮かび上がってくるようだった。 
   
 「雪乃の大学じゃ、俺の評判はあんま褒められるものじゃなかった」 
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