33: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 18:00:18.21 ID:P7mZ3r8kO
 「どうやら向こうでは俺に関して根も葉もない噂が飛び交っていたみたいでな。それだけ雪乃の影響力が大きかったということでもあるけどな」 
 「スルッと元カノの自慢入ったね」 
  
  元カノという単語に聞き馴染みがなかったせいで、一瞬小町の言ったことが理解できなかった。そんなリア充な言葉には縁がない人生だったのになぁ。 
  
34: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 18:00:48.42 ID:P7mZ3r8kO
 「その言いぶりだと、雪乃さんにはバレちゃったわけだね」 
 「正直者だからな」 
 「どこの誰の話をしてるの、お兄ちゃん?」 
  
  小町の冷たい視線が突き刺さる。いや、俺結構正直者よ? 正直すぎて家から出たくないって思ったらテコでも動かない自信あるし。 
35: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 18:01:15.84 ID:P7mZ3r8kO
 「それで苦しい思いをしてたのはお兄ちゃんだけじゃないんだよ? わかってる?」 
 「ああ、わかってる」 
  
  今は、という言葉は意味がないから口にしない。あの頃にそれが理解できていたなら、きっとあんな結末には至らなかったはずだ。 
   
36: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 18:01:53.82 ID:P7mZ3r8kO
 ―― 
   
 ―――― 
  
 「いただきます」 
37: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 18:02:20.79 ID:P7mZ3r8kO
 ―― 
  
 ―――― 
  
  不定形な意識が、徐々に輪郭を持ち始める。 
38: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 18:02:48.97 ID:P7mZ3r8kO
 とりあえずここまでです。 
39:名無しNIPPER[sage]
2020/11/12(木) 22:14:49.73 ID:hhFo4CypO
 あ 
40:名無しNIPPER[sage]
2021/04/05(月) 10:29:35.96 ID:HhRJCrG3o
 まつ 
41: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2021/09/03(金) 18:03:41.02 ID:YbM8yKa9O
  玄関の鍵を開けた瞬間、一気に疲労が全身に押し寄せてきて、倒れ込むように床に座り込んだ。 
   
 「はぁ……」 
  
  ため息がこぼれる。幸せが逃げてしまう、なんて常套句が一瞬頭に浮かんだが、そもそも逃げる幸せもない。いや、今日久しぶりに小町に会えたのは幸福だったか。 
42: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2021/09/03(金) 18:04:08.98 ID:YbM8yKa9O
  あれから何年が経っている? 
   
  数えるのも嫌になったからわからないが、大学を卒業して働き始めて数年になるから、相当な年月のはずだ。 
   
  出会いがなかった、なんて言い訳は正直できない。 
43: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2021/09/03(金) 18:04:35.01 ID:YbM8yKa9O
  優しい夢の中へ逃げ込もうとも、現実は、遠い時の彼方で既に起こってしまった事実は、微細なカケラすらも変わらない。 
   
 『あたしは、ヒッキーのことが……』 
   
  あの空間を壊したのは、他でもない俺自身だ。 
54Res/39.34 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20