47: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2021/09/03(金) 18:06:51.44 ID:YbM8yKa9O
 「……お久しぶりですね」 
 「あら、随分他人行儀なんだねぇ」 
  
  ベージュ色の薄手のトップス姿は、以前よりも落ち着いた印象を受けた。この年齢になって大学生の頃とファッションが変わらないわけがないのだが、どこか不思議な感覚に陥る。 
  
 「こんなものじゃないですか、普通」 
 「昔だったら、絶対もっと面白かったのになぁ」 
  
  そんな反応してたっけ、俺。 
   
  なんて考えているとケラケラと雪ノ下さんは笑う。最後に会ったのなんて何年も前だったはずなのに、その姿はその頃の彼女を簡単に想起させた。 
   
 「絶対に出くわしたくない人間と鉢合わせちまった……みたいな感じだったのに」 
 「うっ……」 
  
  見事に図星である。 
   
 「それにしても比企谷くんも、アレだね」 
 「アレ?」 
 「アレはアレだよ」 
 「歳をとると単語が出てこなくなるやつですか?」 
 「あ、ひどいなーそれは。思ってても言っちゃダメなやつだよ?」 
  
  気分を害したのなら申し訳ないが、それで早く俺を解放してくれるならありがたかった。いや、俺一応出勤中だし。割と時間ないし。 
  
 「せっかく濁してあげようかなって思ってたのにな」 
  
  その声音は、ひどく聞き覚えのあるものだ。忘れられるわけがない。 
   
  この人の何もかもを見通しているような、そんな冷たい声。 
   
  それが俺は酷く不愉快だったことを、今更になって思い出すが時すでに遅し。 
  
 「変わってないね、比企谷くん」 
54Res/39.34 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20