48: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2021/09/03(金) 18:07:42.35 ID:YbM8yKa9O
 ―― 
  
 ―――― 
  
 「あれ、比企谷さん。今日は定時ですか?」 
 「ちょっと用事がな」 
 「デートですか?」 
 「それだったらどれだけよかったかなぁ……」 
  
  むしろ死刑執行の方が近い。 
   
  えー、気になるなぁ、という後輩の言葉を避けて、久しぶりの定時退社である。この後の用事が用事じゃなかったら、どれだけ清々しかったか。これでまた当分定時で帰れなさそうだ。――あれ、なんかおかしくない? 
   
 「偉いね。しっかり時間厳守。さすが社会人」 
  
  会社のドアを抜けると、雪ノ下さんはそこに堂々と立っていた。見ず知らずのビルの前で待つというのに、普通、もう少し遠慮というか気後れとかしないものだろうか。 
   
  ないな、この人にそんなものがあるわけない。あったら社畜の貴重な定時退社をこんな風に奪いに来ないだろう。 
   
  ――いや、単純にこの人が雪ノ下陽乃だから、という理由だけではない。 
   
 「それで、俺に話って何なんですか?」 
  
  答えのわかりきった質問をする。 
   
  雪ノ下さんは何も言わなかった。 
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