7:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:27:30.69 ID:66ORp3Ez0
 木に傷をつけたり、枝を折ったりして目印を残しながら彼女を背負って森を歩いていた。しばらく歩いたが、まだずいぶん森が深い。彼女に地図を確認してもらっていなければ、街に向かって近づいているとは思わなかっただろう。 
  
 勇者「随分道が険しいですね。いつも、こんな森の奥深くまで薬草を取りに来てるんですか?」 
  
 村娘「この方角にはほとんどだれも来ませんから・・・いつもはもう少し北の方で薬草を探してるんです。そのあたりはここと比べればいくらか開けてますし、歩きやすいですから。」 
8:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:28:26.34 ID:66ORp3Ez0
 勇者「それで、今日様子を見に行こうと思ったんですね。そのあなたの友人はどうして捕らえられたんですか?」 
  
 村娘「彼女は強い力を持った魔法使いで、それで、国に目を付けられたんです。戦争に協力しろって言われてて、きっとそれを断ったから・・・。」 
  
 途切れ途切れに、不安そうに彼女は言った。彼女もどうしてこんなことになったのか分かっていないのかもしれない。ある日突然、理不尽に連れていかれた彼女の友人のことを思うと、いてもたってもいられなくなった。 
9:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:30:07.08 ID:66ORp3Ez0
 戦士「ここか?待たせたな、薬草採ってきてやったぞ。」 
  
 彼女の家に到着し、足の手当てをしていると戦士がやってきた。彼も何とか完全に日が暮れる前に到着した。 
  
 村娘「ありがとうございます、戦士さん。」 
10:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:31:20.44 ID:66ORp3Ez0
 勇者「確かに・・・どうして魔法使いがその塔に捕まってると知ってるんですか?」 
  
 村娘「それは・・・彼女が連れていかれたとき、私もその場にいたからです。」 
  
 彼女が言いにくそうにそう言った。その様子を見て僕は、強力な魔法使いだという彼女の友人が捕まってしまった理由が分かったような気がした。国の兵士は、彼女を人質にとって魔法使いを脅したのではないだろうか。彼女は自分のせいで友人が捕まったという負い目を感じて苦しんでいるのかもしれない。 
11:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:33:05.90 ID:66ORp3Ez0
 「こんにちは」 
  
 村娘「ええと、どちら様ですか?」 
  
 役人「国の役人だ。こちらのお嬢さんが魔法使いと親しい仲だと聞いてね。お願いしたいことがあって来たんだ。上がっても?」 
12:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:34:48.06 ID:66ORp3Ez0
 役人「次に魔法使いが訪ねてきたら、これを彼女に飲ませて欲しい。」 
  
 村娘「・・・何ですか?これ。」 
  
 役人「毒薬の一種だ。」 
13:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:36:00.41 ID:66ORp3Ez0
 村娘「じゃあ、私が説得します。役人さんの話をちゃんと聞くように。だから、こんな薬は・・・」 
  
 役人「駄目だ。」 
  
 彼は急に怖い顔になり、きっぱりと言った。 
14:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:37:18.05 ID:66ORp3Ez0
 役人「ところで、君のお父さんの職業はなんだったかな? 
 君の弟は今年でいくつになる?元気にしているか? 
 君は母親のために毎日薬草を採りに行ってるんだったね。 
 確かにこの辺りはいい薬草が生えてそうだ。」 
  
15:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:37:57.60 ID:66ORp3Ez0
 役人「何も難しいことをお願いしてるわけじゃない。 
 次に彼女が訪ねてきたら、飲み物にこの薬を入れて飲ませる。 
 薬が効いて彼女が眠ったら、窓を開ける。 
 それを合図に、近くに待機している私の部下が彼女を回収に行くから、君はただ見ていればいい。 
 それだけだ。できるね?」 
16:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:42:16.88 ID:66ORp3Ez0
 彼女は話し終えてからもしばらく泣き続けた。ようやく泣き止んだ彼女を別室で休ませ、戦士と今後についての話を始める。 
  
 戦士「さあ、どうする?」 
  
 勇者「手口が汚い。それに監禁されている場所もあんな胡散臭い場所だろ?おそらくだけど、魔法使いはおおっぴらに犯罪者として連れていかれたわけじゃないと思うんだ」 
17:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:43:26.04 ID:66ORp3Ez0
 塔には見張りはいなかったが、出入り口は閂か何かで内側から完全に閉じられていたため、外壁をよじ登り、窓の鉄格子を外して中に入った。 
  
 勇者「ここかな・・・」 
  
 戦士「ああ、可能性は高そうだ。」 
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