34:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 23:17:48.85 ID:6NLLeJ5C0
  彼が胸中の痛みなど感じさせない、いつも通りの顔をしていただけに、かえって躊躇われるなか、千夜は「あの」と切り出した。 
  
 「ん?」 
 「この度は、すみませんでした」 
  ここは誠心誠意と思い、頭も下げた。会釈程度に。 
 「はは、大丈夫だって。増えたろ?」 
  
  二人が行ってから、千夜はしゃがみ込んだ。いくつかの破片を取り上げ、文字の形を頼ってパズルよろしく重ねてみる。ちゃんとした接着剤があれば、ハリボテぐらいにはなるだろうか。 
  それから大きめのものを一つ、ひょっとしたら暖かく感じられはしないかと、手の平に乗せたり指で撫でてみたりした。 
  
  そうこうするうちに、 
 「プロデューサー、あのカップどこで買ったの?」 
 「あのカップ? 通販…… いや結局お台場だったかな?」 
 「ふーん。あれね、死んだお父さんに貰ったことにしといたよ」 
 「え、父さん? なんで?」 
 「あ、引退した先輩だっけ。なんでってほら、エモくなるから」 
 「あんな安物エモくしてどうすんだ」 
 「懐くよ」 
 「んなバカな」 
 「いいでしょ?」 
 「ああ最高」 
  と聞こえて来たので、破片はすぐさま投げ捨てた。 
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