18: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:19:22.57 ID:Pb5RWNl50
   
 「そうだな、今まで王子様のような役柄が多かったから別のタイプのイケメンも練習してみるのはどうかな」 
 「えっ……!?」 
 「ハイ! それなら私、琴葉さんにやって欲しいシチュエーションがあります!」 
  
19: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:20:05.07 ID:Pb5RWNl50
   
  要約すると、以下のようになる。 
  
 「なるほど。世話焼きの年上幼馴染お兄ちゃんといったところか」 
 「理解が早くて助かります!」 
20: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:21:11.82 ID:Pb5RWNl50
   
 「えっと、百合子ちゃんが幼馴染っていうことで良いのかな……?」 
 「はい! 寝坊して家から飛び出した私を玄関前で待っていてください!」 
 「細かいな」 
  
21: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:21:46.38 ID:Pb5RWNl50
   
 「よっ」 
  
 ソファに座っていた静香と美咲ちゃんの背筋がビクッと伸びた。美咲ちゃんはいつの間にかソファに移動していた。アイドルみたいなもんだからいっか。 
  志保はというと「手を上げたりせずに、寄りかかっている壁から背中を浮かせるだけで待っていたことを表現しているのね。敢えて名前も呼ばないことで日常感や距離の近さも伝わってくる。流石琴葉さん……」と冷静に分析していた。どうした。 
22: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:22:21.84 ID:Pb5RWNl50
   
 「琴葉くん、待ってなくて良いって言ってるのに!」 
 「百合子と一緒に行かないと親がうるさいんだよ。ホラ、行くぞ」 
 「あ゛ぁ゛っっ!!!」 
  
23: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:22:47.39 ID:Pb5RWNl50
   
 「百合子さん、堕ちるの早くないですか!?」 
 「だって、だって。本当は好意を持っているのに素直になれなくて親を言い訳に少しでも一緒にいたい、ちょっとぶっきらぼうな幼馴染なんて、そんな、そんなの……」 
  
  理解が早い。学業でもその理解力を発揮してほしい。 
24: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:23:34.81 ID:Pb5RWNl50
   
  琴葉に「静香ちゃん、どうだったかな」と聞かれた静香が「あっ、うっ」と狼狽えている。この流れでいくと次のターゲットは静香だろうか。 
  心なしかいつもよりも顔が近いように見える。静香の顔がみるみる赤く染まっていく。 
  その様子を見て琴葉に何かのスイッチが入ったらしい。 
  ごく自然な所作で静香の方に手を乗せる琴葉。静香の細い肩が再びビクッと飛び上がる。 
25: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:24:05.95 ID:Pb5RWNl50
   
 「可愛いよ、静香」 
 「ひんっ」 
  
  頭からポシュウと何かを吹き出しながら静香がソファにズルズルと沈んでいった。 
26: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:25:06.71 ID:Pb5RWNl50
   
  さて、そんな日常の平和を噛み締めたのも束の間。今度は志保から謎のオーラが燃え盛っていた。もう少し平穏を謳歌したいものだが、765プロというのはこういうものである。 
  ちなみに百合子と静香はダラリと身体を床もしくはソファに投げ出してピクリともしていない。いくつもの犠牲が積みあがった先に平和があるのだ。 
  
 「私はギャルをやります」 
27: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:25:57.08 ID:Pb5RWNl50
   
  なんかもう琴葉は「私はどうすれば良い?」とは聞かなかった。 
  志保が先の言葉を吐いてからすぐにクルリと背を向けてしまったせいで反応出来なかったのかもしれない。 
  ただ、素人である俺から見ても志保の背中は強い意志を放っていた。 
  志保は事務机の椅子に手をかけて一つ深呼吸をした。 
28: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:26:33.61 ID:Pb5RWNl50
   
  ドカッ、と粗雑な音を上げて志保が椅子に深く腰かけた。背もたれがギシッと軋むと同時に、志保の左足が持ち上がり、右ひざの上に組みあがった。一連の流れがあまりにもスムーズで、初めからそのポーズであったような錯覚すら覚えた。 
  その姿勢のまま、志保は顎で琴葉を睨みつけた。視線は琴葉に一直線に向いているのに、俺と美咲ちゃんは蛇に睨まれたような感覚に包まれた。 
  ただ一人、琴葉だけが怯まずにズンズンと志保の方に歩みを進めた。 
  
40Res/21.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20