ハリー・ポッター「僕の言うことを聞け」ダドリー・ダーズリー「……わかった」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:19:14.47 ID:43J6jqUVO
ホグワーツでの実りある1年を終えたハリーはプリベット通り4番地へと帰ってきていた。
ここにはハリーの母親の姉であるペチュニア叔母さんと夫であるバーノン・ダーズリー夫妻が暮らしており、彼らは甥に当たるハリーのことを快く思っておらず、冷遇していた。
なので正直、もう二度と帰りたくない場所であったのだが、来年度が始まるまでは厄介にならざるを得ず、仕方なくハリーはただいまの挨拶をしてダーズリー家の玄関を開いた。
「誰かと思ったら、小僧。お前か」
リビングにはダーズリー叔父さんが居てハリーにおかえりとは言わなかった。しかし、それ以上何か言うわけでもなく静かなものだ。
「ただいま、叔父さん」
一応、挨拶を繰り返しておく。邪険にされるかと思ったがやはり叔父さんは静かだった。
叔父さんだけでなく、家全体が静まり返っていて、ハリーがホグワーツに行く前とは何かが違うような漠然とした違和感を覚えた。
「叔母さんは?」
「叔母さんは今、ちと取り込み中でな……」
言葉を濁した叔父さんを怪訝に思いつつ、洗濯物でも取り込んでいるのかと庭に目を向けると、2階から叔母さんの悲鳴が響いた。
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2
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:20:46.76 ID:43J6jqUVO
「今の、叔母さんの……」
「こうしちゃいられん!」
ペチュニア叔母さんの悲鳴を聞きつけたダーズリー叔父さんは慌てて2階に向かい、ハリーもその後を追いかけた。階段を上り終えるとそこでは、ダドリーの部屋の前で、叔母さんと息子の攻防戦が繰り広げられていた。
以下略
AAS
3
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:24:19.10 ID:43J6jqUVO
「小僧。飯は自分で買ってこい」
ペチュニア叔母さんの手当てを終えたバーノン叔父さんにお金を握らされ、ハリーは近所のスーパーにお弁当を買いに出かけた。
バーノン叔父さんも混乱していたのか1人分にしては多すぎる金額を手渡して来たので、ハリーはおやつを買いたい誘惑に駆られながらも、一応、ダーズリー家のぶんのお弁当も買った。
以下略
AAS
4
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:26:44.33 ID:43J6jqUVO
「小僧。お前が学んだ中には役に立ちそうなものはあるのか? たとえば、不安定になってしまった精神を落ち着かせるものや……」
「叔父さん?」
ハリーは思わず訊ね返していた。あまりにもそれがおかしな問いかけだったからだ。
あのバーノン叔父さんがよもやハリーに対して役に立つ魔法の存在を確認するなんて。
以下略
AAS
5
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:28:21.97 ID:43J6jqUVO
「まずは詳しい状況を教えて欲しい。じゃないと、魔法が効くかどうかは判断出来ない」
自分が校外では魔法を使えないことを伏せて、なるべく正論のようにハリーは諭す。
バーノン叔父さんは仕方なく、語り始めた。
以下略
AAS
6
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:30:06.18 ID:43J6jqUVO
「叔父さん。確認するけど、引きこもる前のダドリーは毎日怪我していたり持ち物がなくなっていたわけじゃないんだよね?」
「当たり前だ。もしそんな前兆かあったのならこうなる前に別の学校に転校させている」
だろうなと頷きつつ、少なくとも表面的な問題ではなく、内面的なことだろうと察した。
以下略
AAS
7
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:31:40.82 ID:43J6jqUVO
「ダドリー」
ノックして、返事を待つ。応答はなかった。
「入るよ」
以下略
AAS
8
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:33:44.80 ID:43J6jqUVO
「じゃあ、嘲笑いにきたのか?」
さて、どうだろう。そうなのかも知れない。
自分にはダドリーを救う気なんてこれっぽっちもなくて、ただ引きこもりになった嫌な従兄を嘲笑いに来ただけ。それだけだろうか。
以下略
AAS
9
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:35:26.28 ID:43J6jqUVO
「今のところ実害はないにせよ、叔父さんと叔母さんはそのうち僕に責任転嫁しそうだからね。お前の杖から出る毒電波が、だとか」
「杖、あるのか?」
「あるよ、ほら」
ハリーがポッケから杖を取り出して見せると、ダドリーはスゲーと目を輝かせた。
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10
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:37:25.26 ID:43J6jqUVO
「パパの会社の社員の子供が周りに集まっていつの間にかリーダーみたいになってさ」
「裏で陰口を言われたりした?」
「そんなのは別に気にしない。ただそいつらが、クラスメイトをいじめてるのを客観的に見たら……もう学校に行くのが嫌になった」
その説明になるほどと、ハリーは納得した。
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11
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:38:59.24 ID:43J6jqUVO
「挙句の果てにあんなに蔑ろにしていたお前を頼って自分の息子に魔法までかけさせようとするなんて、パパもママもどうかしてる」
ダドリー。少し見ないうちに見違えたよ。
通常、親の庇護下に置かれた子供が自分の環境に疑問を持つことは難しい。それが現実。
それだけが現実であり、学校生活という環境の変化によって、違和感を覚えたのだろう。
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AAS
12
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:41:12.49 ID:43J6jqUVO
「お前が英雄とはな」
「君が引きこもりとはね」
口に出すと、なんだかおかしくってふたりして噴き出した。久しぶりに、笑い合った。
久しぶりすぎて、最後にふたりで笑い合ったのがいつだったかは定かではないが、こうして仲良く笑い合った頃が、確かにあった。
以下略
AAS
13
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:44:25.21 ID:43J6jqUVO
「ともあれ、お前は楽しそうだな」
「まあね」
ハリーが学校生活を謳歌していることについてダドリーは僻んだり妬んだりしなかった。
以下略
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14
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:47:37.37 ID:43J6jqUVO
「ホグワーツに入学するまでは、僕も毎日なんのために生きているのかわからなかった」
ダーズリー家での日々は過酷で、ハリーの生きる気力を削いでいった。無意味な日常。
無価値な自分。先が見えない未来。だけど。
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15
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:50:28.20 ID:43J6jqUVO
ようやく部屋から出てきたダドリーを連れて1階に戻ると、そこはなんと地獄絵図だった。
ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅ〜っ!
「ぬおおおおおおおおおおおっ!?!!」
以下略
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16
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:51:16.33 ID:43J6jqUVO
おまけ
マルフォイ家の屋敷の一室で、まるで妖精のように美しい少女が物憂げに溜息を吐いた。
真夏の陽気すらもひんやりとした冷気に変える銀色の妖精の名前はドラ子・マルフォイ。
以下略
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17
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:53:30.30 ID:43J6jqUVO
「ハリーはどうしてる?」
「ハリー・ポッターは現在……」
「あのお方には『卿』と付けなさい」
「はい、心得ました」
以下略
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18
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:56:50.69 ID:43J6jqUVO
「なんとかして助けてあげられないかしら」
ドラ子には決して悪気があったわけではなく、ハリーが帰ってきてもおかえりも言わないダーズリー家に天罰を下しただけだった。
それがかえってご主人さまを苦しめている現状を憂い、どうにか打破しようとしていた。
以下略
AAS
19
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/19(月) 21:59:24.67 ID:43J6jqUVO
「間抜けなウィーズリーのことだから空飛ぶ車をマグルに目撃される可能性が高いわね」
「おっしゃる通りで」
「念のため、お父様に頼んで魔法省の役人に根回しをしておくわ。それで、ドビー」
「はい、お嬢様」
以下略
AAS
20
:
名無しNIPPER
[sage]
2021/04/20(火) 18:58:17.05 ID:CLddI9FV0
好き
シリーズっぽいけど、前作あるならスレタイ教えて欲しい
21
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/04/20(火) 20:27:08.37 ID:cArByjgvO
>>20
ハリー・ポッター「僕の言うことを聞け」ドラ子・マルフォイ「……はい」
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どうぞ
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