【シャニマス】果穂「マイヒーロー」
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1:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:16:10.94 ID:IsY2Uyq60
「樹里ちゃんって怖くない?」
「え?」
 きっかけはある日の放課後。アタシの教室では女の子で集まって、好きなアイドルの話をしていた。どこの学校にだってありふれた風景。少し違うのは、アタシがそのアイドルグループの一員ということくらい。

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2:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:18:12.25 ID:IsY2Uyq60
 一番人気はちょこ先輩。お姉ちゃんになって欲しいのは凛世さん。少し大人っぽい子は将来夏葉さんみたいになりたいと言う。
 そんなありふれた会話の途中、一人の友達が何気なくそう言った。


3:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:20:09.03 ID:IsY2Uyq60
「…怖くないよ」
「でも金髪だし…」
 そんなの関係ない。みんながかっこいいって言ってた315プロの人だって金髪だった。
「なんか、前ライブ見に行ったら無愛想だったね…」
 違う、樹里ちゃんはあの時緊張してただけ。新曲のラップを失敗しないように。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:22:14.42 ID:IsY2Uyq60
「ごめん!!ごめんね!!でも、その…」
「ううん…こっちこそ…」
「お、いたいた、果穂、レッスンに行くぞ…って…」
「あっ、プロデューサーさん!い、今行きます!」
 気まずいまま、アタシはレッスンのために教室を出る。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:23:32.40 ID:IsY2Uyq60
 学校を出て、レッスンをしていてもアタシの心は教室に置いてきたままだった。誤解した友達を更に誤解させたのはアタシだ。その事実がより一層アタシの心を掻き乱す。どうしてどうしてどうしてどうして…
「果穂…どうしたんだ?」
「…樹里ちゃん」
 そんな心の不調を一番知られたくない人に知られてしまった。今日ばかりは樹里ちゃんの優しさが憎い。


6:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:24:54.05 ID:IsY2Uyq60
「たしかに…何かあったのか?果穂?」
 プロデューサーさんまで気づいてしまった。
「な、何でも…ないんです…」
「何でもないって顔してねーだろ…アタシには言えない話か?」
 全てを見透かしたように笑う樹里ちゃんの金髪は夕焼けが反射して、キラキラととても輝いて悲しいほどに綺麗だった。


7:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:26:31.49 ID:IsY2Uyq60
「いや…その…」
「ん?」
 違う違う違う違う、そんな顔をさせたかったわけじゃない。その一心でアタシは間違えてしまった。
「樹里ちゃんは…不良じゃないですよね!」
「え?」
以下略 AAS



8:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:29:10.13 ID:IsY2Uyq60
「ごめん…ごめんな、果穂…」
「ち、違うんです!!そうじゃ…そうじゃなくて…」
 こんな時にまで綺麗に煌めく樹里ちゃんの髪の毛が寂しそうに揺れる瞳と相まって息が詰まる。最低だ。アタシは大切な人を傷つけておきながらその人に見惚れている。
「果穂…それはな…」
「いいんだ、プロデューサー」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:29:45.08 ID:IsY2Uyq60
「なあ、プロデューサー、明日から髪の色戻すよ」
「樹里…」
「違います!!!」
 樹里ちゃんとは全然違う、大きな声をそれでもアタシは出さずにはいられなかった。
「違います!!!樹里ちゃん!!!樹里ちゃんは…樹里ちゃんは…」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:31:31.15 ID:IsY2Uyq60
「私は…樹里ちゃんが大好きです!!!」
「果穂…」
 言った。でもまだだ、まだ足りない。ちゃんと伝えないと。誰よりも優しくて、誰よりも強い樹里ちゃんに。ヒーローみたいな樹里ちゃん。いつもアタシたちを守ってくれる樹里ちゃんを、今度はアタシが守るんだ。


11:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:32:29.58 ID:IsY2Uyq60
「樹里ちゃんは、いっつもとっても、誰にでも優しくて…ヒーローみたいで…だからアタシは大好きで…」
「…はは、こんなガラの悪いヒーローいねぇよ」
「いえ!!樹里ちゃんは…誰がなんと言おうとヒーローです!!」
「果穂…」
「そうだよな、果穂、樹里は誰より優しいもんな」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:33:27.23 ID:IsY2Uyq60
「うぁぁぁぁぁぁん!!!」
「はは、泣くなよ…果穂ぉ…」
 そういう樹里ちゃんだって泣きそうなのに。いつだって樹里ちゃんはアタシたちのために泣くのを我慢している。
「でも…でも…アタシ…樹里ちゃんを傷つけて…なのに…アタシが先に泣いて…」
「違うよ」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:34:16.83 ID:IsY2Uyq60
「果穂が泣いてくれたから…アタシのために泣いてくれたから、アタシは泣かずにいられるんだよ」
 どうして樹里ちゃんはこんなに強いのだろう。本当は一番泣きたいのは樹里ちゃんのはずなのに。
「ありがとな、果穂。アタシも優しい果穂が大好きだ」
「アタシは…優しくなんか…」
「優しいよ。な、プロデューサー?」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:35:13.94 ID:IsY2Uyq60
「…プロデューサーさん」
「ん?どうした?果穂?」
 帰り道、いつもなら一人で帰れるけれど、今日はたくさん泣いてしまったから、それを道行く人に見られるのは恥ずかしいし、事務所的にも良くないからとプロデューサーさんが送ってくれた。
 泣いているところを見られた気恥ずかしさから、最初は黙っていたのだけれど、気になったことを聞いてみることにした。プロデューサーさんは大人だから、もしかしたらアタシの知らない答えを知っているかもしれないから。


15:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:36:15.70 ID:IsY2Uyq60
「どうして樹里ちゃんは、あんなに優しいんでしょうか?」
「…そうだなぁ」
 プロデューサーさんは、きっとアタシが見られたくないことを察して、こっちを見ずに運転に集中するふりをしながら、少し考えてから教えてくれた。


16:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:37:05.01 ID:IsY2Uyq60
「きっと、樹里はさ。たくさん傷ついてきたんだよ。だから他の誰にもそんな想いをさせたくないんじゃないかな」
「それじゃあ…樹里ちゃんが可哀想です…」
「そうだよな、だから果穂は樹里を守ろうと思ったんだろ?」
「プロデューサーさん…どうしてわかるんですか?」
「わかるよ、それくらい」
以下略 AAS



17:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:37:46.44 ID:IsY2Uyq60
「プロデューサーさんは凄いです…」
「何言ってんだ。樹里を救ったのは果穂じゃないか」
「え?」
 何を言ってるんだろう。余計なことを言って傷つけたアタシが樹里ちゃんを救ったわけがない。
「嬉しいことなんだよ、自分のために怒ってくれたり、泣いてくれたりする人がいるってのは」
以下略 AAS



18:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:38:39.56 ID:IsY2Uyq60
「なあ、果穂」
 お礼を言って、車を出ようとしたアタシにプロデューサーさんはこれで最後とばかりに付け足した。
「樹里は優しいよな。そんで俺は『優しい人はたくさん傷ついた人』って言っただろ?でもな、傷ついたまんまじゃ誰かに優しくなんてできないんだ」
「じゃあ樹里ちゃんは…どうして優しいんですか?」
「誰かに優しくされたからじゃないか?」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:39:38.86 ID:IsY2Uyq60
「おはようございます!!」
 次の日の朝、アタシが学校に行くと少し教室がざわついた。無理もない、喧嘩ではないと思うけれど怒って出て行ったようなものだったから。
「か、果穂ちゃん…」
「あっ、うん…」
 樹里ちゃんを怖いと言っていた子に声をかけられた。


20:名無しNIPPER
2021/08/28(土) 16:40:36.74 ID:IsY2Uyq60
「昨日はごめんね、その、樹里ちゃんのこと…」
「ううん、アタシの方こそごめん…でもね」
 昨日あれから一晩考えた。アタシは樹里ちゃんが不良だったら、嫌いになるのだろうか。いいや、きっとならない。だってきっと樹里ちゃんはどんなになっても優しくて強いあの樹里ちゃんだから。
「アタシね、樹里ちゃんのこと大好きなんだ!」
 早く放課後にならないかな。そうしたら誰よりも優しくて、誰よりも強いあの人に、直接言えるから。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[sage]
2021/08/28(土) 21:41:56.81 ID:x96nTpQ+o
おつおつ


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