11:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:42:26.93 ID:u50g9+A20
  
  
 「奏さんが羨ましいです。なんでもすぐに器用に出来て」 
  
 「……どうかしらね」 
  
 「えっ?」 
  
  
  小さく首を傾げた文香。私は笑みを作った。 
  
  
 「文香だって、コツさえつかめばすぐに出来るようになるわよ」 
  
 「……それは、出来る人だからのセリフです」 
  
  
  否定は出来なかった。少なくとも踊りという分野に置いては、私は文香より出来る人間だ。 
  
  そう言う得意不得意の差は、人によってあるのは当然である。 
  
  
  でも、文香が思っているほどには、文香が出来ない側の人間とは思えなかった。 
  
  
 「さっきもトレーナーさんが言ってたじゃない。文香は余計な力が入り過ぎてるって。もっとリラックスしてやってみなよ」 
  
  
  動きが硬いのも、体が強張ってしまっているからだ。きっとそれは、ダンスというものに対する苦手意識からそうなっているんじゃないだろうか。 
  
  もっとも、文香は納得していないようだけど。 
  
  
 「リラックスと、言われましても……」 
  
 「トレーナーさんも言ってたでしょ。クラゲのように脱力する」 
  
 「クラゲのように」 
  
  
  
  むうっ、と文香の眉間に皺が寄った。 
  
  これではクラゲというよりカメである。 
  
  
  
  
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