悪役令嬢「あんたはあたしみたいだね」腹黒王子「あはは。キミが僕なんだよ」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:24:13.13 ID:nMXYXkpFO
「今日から編入する生徒を紹介する」

地元にある女子校に通っている理由はなんとなくであり、強いて言うなら中学時代に仲の良かった友達が先に推薦でその女子校に進学することが決まっていたから自動的に自分もそこに決めたに過ぎなかった。

「どうも。皆さん、こんにちは」

毎日変わらない日々。退屈だけど、それ以上の安心感がその女子校にはあった。しかし、10代の若者はそれではいかんらしく、ある日突然、試練が訪れることとなる。編入生だ。

「この度は我々が通っていた男子校との統合ということでこの先お互いに気まずい思いをするかとは思いますが協調性を持って……」

聞いてない聞いてない聞いてない。男男男。

「……というわけで、みなさまどうぞ、これからよろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げる優男。謙虚な奴らしい。
顔を上げると困ったように微笑んだ。それは我々の遺伝子に刻まれて埃を被った『母性』に火をつける。認めたくない認めたくない。

「くっそ……所詮、あたしも女か」

寝耳に水。降って湧いたような話。それでも種の保存という観点から言えば我々女子高校生は目の前に良い男が居れば本能的に確保しようとしてしまうのだろう。当然、自分も。

これはそんな本能に抗って拗れてゆく物語。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:29:56.34 ID:nMXYXkpFO
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3:名無しNIPPER
2022/01/02(日) 22:31:58.07 ID:nMXYXkpFO
「王子、今日もかっこかわいいね」
「ねー」

入学以来、毎朝毎朝、よそのクラスからも見学者が絶えない我がクラスの王子を横目で見やる。かっこいいかはともかく、かわいい。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:34:23.05 ID:nMXYXkpFO
「勘違いしやがって……ざけんじゃねーぞ」
「お?」
「ストーップ!!」

グイッとタイを引っ張ると王子が席を立ち。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:36:08.42 ID:nMXYXkpFO
「弟の小さい頃の話?」
「はいっ是非っ」
「あいつはああ見えてかわいい奴でさ……」

後日、お姉さんとお会いしたあたしは根掘り葉掘り家来の過去を掘り下げた。やはりというか、なんとなくわかっていたことだが、この姉は弟のことが大好物……もとい、大好きらしく、実に興味深いエピソードが聞けた。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:38:12.89 ID:nMXYXkpFO
「あ、居た」
「へ?」

しばらくぼけっと店内で余韻に浸っていると家来がやってきた。恐らくお姉さんが行けと命じたのだろう。敵に塩を送る味な真似を。

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:39:38.50 ID:nMXYXkpFO
「こほん」
「今更取り繕っても無駄だぞ」
「お黙り」

逆に揶揄われて顔を赤くすると彼は不意に。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:43:25.88 ID:nMXYXkpFO
「やっぱり仲良いんだな、お前ら」
「どこがっ!?」

微笑ましそうに見守る家来に噛みつくと、彼は寂しそうに微笑んで席を立ってしまう。

以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:46:19.72 ID:nMXYXkpFO
「キミはさ、綺麗な顔してる癖に僕たちのことをを遠巻きに眺めるだけで近づいて来なかったよね。そういう俯瞰で客観的に物事を見ているところが気に入らなかったんだよね」
「あたしはあんたのことをもっと良い奴だと思ってたケド、見る目がなかったみたいね」
「僕は良い奴だよ。その証拠に、キミにとってより良い提案をしてあげようじゃないか」

いくら払い除けてもしつこくほっぺをつついてくる王子を睨みみつけるあたしに、底意地が悪そうな顔をしてこんな提案をしてきた。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:49:25.71 ID:nMXYXkpFO
「そっちがその気なら、あたしはあんたがあの人を傷つけてないか目を光らせておくわ」
「では、契約成立ということで」
「は? それとこれとは話が……」
「あはは。初めての彼女がキミみたいな奴でも存外、ワクワクする。不思議だよね?」

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:52:25.08 ID:nMXYXkpFO
「そもそもなんであいつが良いわけ?」
「なんでって……なんとなく」

美味しいランチをご馳走になって満腹のあたしが無防備なところを見計らうように、王子は好意の理由を詰問してきた。食い過ぎた。

以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:54:00.42 ID:nMXYXkpFO
「そんなにあの人のことが大切なら、あの人みたいな女の子と付き合えば良いと思うな」
「そんな女の子は居ないよ。あいつは裏表がないからね。あいつと一緒に居ると、劣等感で苦しくなる。だから彼女にはしたくない」

そんなものだろうか。底抜けに良い人の近くに居ると、たしかに劣等感に付き纏われるのかも知れない。そう考えると、少し可哀想。

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:57:10.06 ID:nMXYXkpFO
「ちょっとあたしの考えを訊いて欲しい」
「うん、いいよ。訊こうじゃないか」
「あたしもあんたも人としてどうしようもない部分がある。あの人はそういう嫌なところがない。でも、目を背けてはいけないんだ」
「よくもそんな大真面目な顔をして、少年漫画の主人公みたいなことを言えるものだね」

以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 22:59:51.80 ID:nMXYXkpFO
「となると、あたしはあんたを振らず、捨てられた可哀想な女になる必要があるわけか」
「その発想がもう可哀想とは程遠いけどね」

発想は自由だ。口に出さなければ問題ない。

以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 23:02:17.80 ID:nMXYXkpFO
「まったく……自分から言い出した癖に」
「あんた、最初からわかってたでしょ?」

教室から連れ出して、人気のない階段の踊り場で詰問すると、王子サマは素直に答えた。

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 23:04:37.17 ID:nMXYXkpFO
「ところでさ」
「なによ、教室に戻らなきゃ……」
「教室まで、手、繋ぐ?」

手か。まあ手くらいなら。もう繋いでるし。
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 23:06:03.52 ID:nMXYXkpFO
「姫もどき」
「なによ、王子もどき」

この頃、そんな呼び方が定着してしまった。
お互いに否定出来ないので訂正することなく性悪コンビは継続している。なんだかなぁ。
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 23:07:48.40 ID:nMXYXkpFO
「王子もどき。あたしは考えた。訊いて」
「訊こうじゃないか」

このままではいけないとは言うまい。あたしは高望みをしているのだろう。それでも手を伸ばすことに意味があると信じているから。

以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 23:09:52.99 ID:nMXYXkpFO
「したかったのはあんたじゃないの?」
「余裕ぶって漏らしても知らないよ?」
「おい、お前ら! とにかく落ち着けって!」

挑発を続けつつ席を立ってトイレに向かうあたしたちを家来が必死に止めようと試みる。
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 23:11:35.23 ID:nMXYXkpFO
「もう大丈夫。スカートあるし」
「まあ、それなら平気か」
「平気じゃねーよ……俺を巻き込むなよ」

スカートを下ろしてひと安心。彼氏も許してくれた。家来くんだけトイレの個室で蹲ってしまっている。とりあえず、便座に座った。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[sage saga]
2022/01/02(日) 23:13:21.55 ID:nMXYXkpFO
「なら、せめて俺の見てないところで……」
「待てよ。逃げんなよ」

あたしは何も言えない。男同士の語らいだ。

以下略 AAS



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