馬場このみ「シクラメンの花の香」【ミリマスSS】
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14: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2022/01/06(木) 23:03:36.68 ID:dy8vOWdb0
揚げ出しは、立派な太さの下仁田葱を二、三センチごとに切って揚げている。大将が丁寧にピラミッド状に盛り付けていて、その上に大根と生姜をおろしたものを乗せ、さらに熱い出汁をかけている。油の香ばしさが混じった出汁の香りに喉が鳴る。
三つほど取って、一つを頬張る。葱の外側は繊維がしっかりとしていて歯ごたえがよく、シャクッと小気味よい音を立てる。中心は、熱い。揚げていたときの熱をまだ持っているからだろう。はふはふと口の中に空気を入れながら食べる。次第に葱の中心部から、トロっとした蜜のような質感と甘みがあらわれた。
「熱いけど、これは美味しいわね」
そう言って、Pのほうを見遣ると、彼は葱の熱さに悶絶していた。俯いて目を見開きながら、鼻から大きく息を吸って耐える彼の姿に、私は思わず噴き出した。
「……美味いな。熱いけど」
「口の中、ベロンベロンになっちょらん?」
「なっちょらん」
「本当に?」
「……上顎がしみる」
「何でウソついたん」
なぜか痩せ我慢して熱がらない彼の姿が滑稽で、私はケラケラと笑ってしまった。
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