817: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/08(木) 10:35:44.29 ID:S2FBcmzU0
  
 ──だけど、当日……菜々が姿を現すことはなかった。 
  
 そして、この通話が、菜々との最後の会話になった。 
  
 これ以降はメールも返事がなくなり、ポケギアも通じなくなってしまった。 
  
 そして、その数ヶ月後── 
  
  
 善子「……手紙……?」 
  
  
 研究所のポストに入った一通の手紙。宛先は書いていなかった。 
  
 封筒を開けると、中から一枚の便箋が出てくる。 
  
  
 ──『ごめんなさい』── 
  
  
 とても綺麗な文字で、たった6つの文字だけが書いてある手紙だった。 
  
 その綺麗な文字を見るだけで、育ちの良さが伺える。そんな筆跡だった。 
  
 それが逆に、菜々の痛みを体現しているかのようで、私は胸が締め付けられるような気持ちになるのだった── 
  
  
  
  
 ── 
 ──── 
 ────── 
  
     🎹    🎹    🎹 
  
  
  
  
  
 善子「──何度か、菜々の家を直接訪ねようと思ったこともなかったわけじゃないんだけど……。……これ以上、私が口を挟むと、余計に菜々を傷つけるんじゃないかと思って……出来なかったわ」 
  
 侑「……じゃあ、その図鑑と、モンスターボールは……」 
  
 善子「……ええ。菜々に渡すはずだったものよ」 
  
  
 博士はそう言いながら、ポケモン図鑑を大切そうに引き出しに戻す。 
  
  
 善子「これは……菜々以外が持っちゃいけない……」 
  
 侑「……」 
  
  
 それは重さを感じる言葉だった。 
  
  
 善子「そこから2年……ようやく、3組の図鑑と最初のポケモンを揃えることが出来た」 
  
 歩夢「それによって、旅立つことになったのが……」 
  
 しずく「私たち……なんですね」 
  
 善子「……そうよ」 
  
  
 少し、研究所の中が静かになる。 
  
  
 善子「……ごめんなさい。やっぱり、こんな重い話、聞きたくなかったわよね……」 
  
  
 ヨハネ博士は申し訳なさそうに言う。 
  
 が── 
  
  
 かすみ「そんなわけないじゃないですかっ!!」 
  
  
 かすみちゃんが、真っ先に声をあげた。 
  
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