25: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:55:21.72 ID:VN/U1bqQ0
  
  俺は無言で立ち上がり、後ろに置かれた樽に向かった。 
  到底、武器とは呼べない農具の中からひざ丈ほどの棍棒を見つけ抜き取る。 
  羊や豚を〆るのに使ったのだろう。 
  棍棒には、既にいくつかの血のシミがついていた。 
  
  机に戻ると、皆が俺の様子を訝しんでいるようであった。 
  握っていた棍棒を、ガキへと放り投げる。 
  ガキは、律儀にも棒を落とさぬよう両手で抱え込んだ。 
  
  俺は、すかさずガキの腰から強引に剣を抜き取った。 
  驚くガキを無視して、剣身を手のひらに載せじっくり検分する。 
  
  錆もなく、よく手入れされた剣だった。 
  刀身に残った曇りは、この剣が幾人もの血を吸ってきた証だ。 
  文句なしにいい剣だ。だが、少し重い。 
   
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