26: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:55:52.70 ID:VN/U1bqQ0
   
 「これは俺が使う。お前はそっちの棒でも使っとけ」 
  
 「酷いじゃないか! それは、その子の剣だ」 
  
27: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:56:24.13 ID:VN/U1bqQ0
  
 「そうさ、俺は野盗さ! 東の山で野営を魔物に襲われ、仲間を全員失い、剣も具足も誇りも何もかもをかなぐり捨てて、街に流れてきた悪党だ!」 
  
  横目にガキと領主を見る。事の成り行きをを見守っているのか、微動だにしない。 
  
28: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:58:16.49 ID:VN/U1bqQ0
  
 「善人ぶりやがって、てめえも盗人じゃねえか。その剣はどこで拾った!?」 
  
 「この剣は、お館様から預かったものだ!」 
  
29: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 14:00:16.59 ID:VN/U1bqQ0
  
 「僕に、その剣は重すぎる。父の形見なんです。大事に使ってください」 
  
  ガキは、そう言うと腰に刺さったままの空の鞘を自ら俺に寄越してきた。 
  俺は、それを受け取り剣を納める。 
30:今日はここまで ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 14:00:55.50 ID:VN/U1bqQ0
   
  流れ者の命を使って、街を守るつもりだろうが。 
  俺には、この街の為に命を捨てるつもりはねえ。 
  
  だが―――この剣があれば俺はまた戦える。 
31:名無しNIPPER[sage]
2024/04/09(火) 17:09:52.93 ID:DoDPT2rOO
 乙 
 面白い。期待 
32: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 07:59:38.46 ID:Q62ZZ+a30
 ♦  
    
   あの盗賊は正しかった。  
    
   僕は、この目で見た。  
33: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 08:00:56.21 ID:Q62ZZ+a30
   
  幸いにも多くの魔物は、その巨体のせいか俊敏とは言えない。 
  ならば壁を背に、地面を背に、魔物の攻撃を誘い、躱し、その間隙を打つだけだ。 
  それも、ひたすらに急所のみを狙って。 
  
34: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 08:02:11.59 ID:Q62ZZ+a30
  
  正門は既に破られ、多くの魔物が門に殺到してきている。 
  当初、大通りには街の衛兵や騎士で構成された本隊が陣取り、僕を含む流民の即席戦士団は道の両脇、並ぶ建屋の路地に配置されていた。 
  魔物の勢いを正規兵が受け止め、その横っ腹を僕たちが突くという作戦だ。 
  
35: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 08:02:50.41 ID:Q62ZZ+a30
  
  門を破った一つ目の巨人が、勢いそのままに僕の棍棒の何十倍もある丸太を振るったのだ。 
  その一薙ぎは、大通りを塞いでいた本隊前衛を文字通りひき潰してみせた。 
  魔物の前衛を食い止めるはずだった、その大半の兵を、一薙ぎで。 
  あまりの光景に、僕はごくりと唾を呑みこんだ。 
36:今日はここまで ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 08:03:23.80 ID:Q62ZZ+a30
  
  十分に、魔物を引き入れてから鳴るはずだった突撃のラッパが響き渡る。 
  魔物の前進を止めることはできない。本隊の指揮官は、そう判断したのだろう。 
  もしかすると本隊を一度退かせるために、僕達を魔物にけしかけたのかもしれない。 
  
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