29: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 14:00:16.59 ID:VN/U1bqQ0
  
 「僕に、その剣は重すぎる。父の形見なんです。大事に使ってください」 
  
  ガキは、そう言うと腰に刺さったままの空の鞘を自ら俺に寄越してきた。 
  俺は、それを受け取り剣を納める。 
  ガキの目は、少しだけ涙に滲んでいた。 
  柄にもなく罪悪感に沈みそうになる。 
  
  結局、最後まで領主は一言も口を挟んでこなかった。 
  止もせず、諫めもせず。何を考えていやがるのか、さっぱりわからねえ。 
   
  だから俺は権力者ってやつが嫌いなんだ。 
  心中を隠して、人を操ろうとするそのやり口。 
  同じ人間とは、到底思えない。反吐が出るぜ。 
   
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