29:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 01:05:35.07 ID:DoK8Vme/0
彼女の顔がよぎる。彼女に魔法をかけーそれを呪いに変えてしまったとき。彼女は確かに幸せそうに見えた。しかしそれは彼女が本当に掴むべき幸せだったのか?俺が与えられる幸せの総和は、本当に何よりも大きかったのか?
「……私が呪いをかけられたがっていても、ですか」
「呪いをかけられたがっていても、や。魔女の大釜は望んで飛び込むところじゃない」
ありすの悲しそうな瞳を、まっすぐに受け止める。もちろん主義に反する行いだ。男たるもの、プロデューサーである前に紳士であらなければならない。だが。
これが俺が人間たる対価として選んだ、高邁な理想と下劣きわまりない妄想なのだ。20年近く見続けた担当の願いを折ってでも守るべき幻想は、確かに存在する。少なくとも俺の理想には。だから。
その先に続くべき言葉は、水蒸気まじりの何かに消えた。胸元に何かが当たる感覚。避ける間もなく身体に回される細い腕。高価な磁器のようでいて、小さく震えている。その原因が何にあるかを察せない人間などいないだろう。
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