30:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 01:06:28.39 ID:DoK8Vme/0
「……呪った責任から逃げるんですか」
「呪いを魔法に戻すためや。なぁ、頼む」
「嫌です。Pさんは私を呪った、それを一生覚えていて貰わないと気がすみませんから」
ワイシャツにシミが広がる。その声色は震えていて、俺が悪人たらねばならないと示していた。拒むことは出来るー俺がリア王になれるのなら。畜生。俺は悲劇は嫌いなんだ。
ふと昔の光景が蘇る。けして美しいとは言えなかった夜桜。酔っていたからこそ美しかった夜桜。ああ、俺はそれにだけはなりたくなかったのに。
最後の抵抗は弱々しかった。すくなくとも、西日本最大手の芸能プロダクションの社長のものとは思えなかった。
「……後悔するぞ」
「分かってます」
「何度も何度も手を洗いたくなるような目に何度も何度も遭うんだぞ」
「望むところです。人生最大の悪事は12歳の時に済ませましたから」
「魔法が呪いになってもか?」
「魔法が呪いになってもです。それに」
小さな顔が俺を見上げる。その微笑みは美しく、悪戯を成功させたような楽しさを湛えていた。ああ。俺は最初から間違っていたのか。
「魔女は3人、いるものでしょう?」
魔法をかけたのは俺だけじゃない。彼女もまた、魔女だったのだ。
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