8:名無しNIPPER
2026/02/22(日) 21:31:02.64 ID:g2DVH8wF0
「でさー、せっかく時間あるし、バッティングセンターとかどう?」
ハンドルを握ったまま、友紀チャンが軽い調子で言う。
「……それ、友紀チャンが行きたいだけでしょ」
「えー、ダメ? バット当たったときの感触、気持ちいいよ?」
「今日はちょっと……そういう気分じゃないかな」
正直に言うと、今は汗をかいたり叫んだりする気分じゃない。
友紀チャンは少しだけ前を見たまま考えて、それからすぐに切り替えた。
「じゃあさ、猫カフェは?」
「え?」
思わず、変な声が出た。
「みくちゃん、猫好きでしょ? オススメのとことか、ある?」
「あるに決まってるにゃ! 今から行こ! えっと猫カフェにも色々あるんだけど、ちゃんと猫チャンの事を考えてくれてるお店がいいところにゃ。無理に抱っこしたりとか猫チャンがケンカしないようにとか、オヤツのあげすぎとかを店員さんが見てくれて、その中でも人懐っこい子が多くて――」
……と。
「あ」
言葉が、ふっと落ちた。
「どうしたの?」
「その……このお店……今改装中にゃ……」
「そっか。じゃ、ダメだね」
「うん……ごめん。ちゃんと確認してればよかった」
さっきまで勢いよく話していたぶん、急に力が抜ける。
楽しい想像をしていた反動で、余計に落差を感じてしまう。
「いや、みくちゃんが悪いわけじゃないでしょ」
「でも……」
友紀チャンはウインカーを出しながら、軽く言った。
「じゃあ別のとこ行こ。まだ時間あるし」
車は、そのまま次の交差点へ向かっていく。
窓の外を眺めながら、少しだけ息を整えた。
(まあ……今日は成り行きでも、いいか)
そう思うことにして、スマホを膝の上に戻した。
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