9:名無しNIPPER
2026/02/22(日) 21:32:01.41 ID:g2DVH8wF0
次の行き先をどうするか考えていた車内で、友紀チャンが前を向いたまま言った。
「じゃあさ、映画とかどう?」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中で、さっきまでの猫カフェの余韻がすっと引っ込んだ。
映画、という単語自体は嫌いじゃないけれど、今日はそこまで想定していなかった。
「映画?」
「うん。この近くにシネコンあるし。今からでも入れそうなのがあってさ」
そう言いながら、友紀チャンは特に迷う様子もなくハンドルを切る。
深く考えている感じはなくて、思いついたから言ってみただけ、という印象だった。
駐車場に車を停めて、エンジンが止まる。
友紀チャンがスマホを取り出して操作し、画面をこちらに向けてきた。
「これなんだけど」
表示されていたタイトルを見て、一瞬だけ言葉を失う。
『マクラノネコン』
カタカナの並びが、どこか力が抜けていて、少し間の抜けた響きに見えた。
ポスターも、ぱっと見では内容が想像しにくい。
(……ちょっとB級っぽいにゃ)
正直な感想は、それだった。
嫌ではないけれど、期待していたわけでもない。
けれど、その感想をそのまま口に出すほどの理由も見当たらなかった。
友紀チャンは上映時間を確認しながら、「時間もちょうどいいし」と軽く言う。
その調子だと、絶対にそれが見たいというわけでもなさそうだ。
「……いいんじゃない?」
そう答えると、友紀チャンはすぐに表情を明るくした。
「よし、決まり!」
決断が早い。
もう少し悩む余地はあった気もするけれど、今さら言うほどでもない。
車を降りて、並んで歩き出す。
映画館の入口が近づくにつれて、外の明るさが少しずつ遠ざかっていく。
自動ドアの向こうに、独特の静けさと、ひんやりした空気が待っていた。
そのまま流れに身を任せるように、館内へ足を踏み入れる。
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