俺の高校生活がこんなに急に桃色に染まるわけがないっ!
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4:名無しNIPPER[sage]
2026/03/02(月) 19:42:45.75 ID:7M8zy6LSO
「そうと決まれば、入部申請書に記入を……」

弥生さんがタブレットを差し出した瞬間、突然大きな音を立てて扉が開いた。

「あなたたち、まだこの部屋を占領しているんですか!」

「……!! きょ、教頭先生?」

現れたのはロマンスグレーの頭髪を丁寧に撫でつけた痩せぎすの男だった。
海王第三高校の教頭にして、その激しい風紀の取り締まり方針から「鬼」と恐れられる佐藤誠也だ。

あまりに激しすぎる登場に、俺は言葉を失ってしまった。

教頭は唖然とする俺たちを傍目に、ずんずんとこちらに進んでくる。
そして咳払いをすると、死刑宣告をするかのように厳かに口を開いた。

「えー、皆さんにお話があります。えーとエス……なに団でしたっけ?」 

「エスケープ団よ!」

こんな状況でも、弥生さんは一切ひるまない。俺が間違っていた。あんたはすげえよ。

「ああ、そうですか。その、皆さんの部の活動内容が不明瞭ということで、学校から廃部の決断が下りました」

「え……」

だれしもが事態を飲み込めず、息を飲んだ。静寂が部屋を包み込む。

「そんな! ようやく新入部員を確保したばっかりなのに」

沈黙を破るかのように、めいが叫んだ。泣きそうな顔をして萌え袖を握りしめている。
この意味の分からない美少女集団にはまだ感情移入できないが、こんなかわいい子を泣かせてはいけないことだけは分かる。

「まったく、手を変え品を変え、難癖をつけて来るのね。学校ってよっぽどやることがないのかしら」

「憎まれ口は結構。とにかく、もう決定事項なので、大人しく部屋を受け渡しなさい」

ああ、弥生さん。あなたは勇敢だった。(マジで)少しのあいだだったけど、あんたとの付き合いも面白かったよ。

「っ……」

さしもの弥生さんも権力には逆らえないのか、ついに黙り込んでしまった。あんたがやり込められるなんて、俺は悲しいぜ。

「先生は、民主主義に賛成ですか……?」

と思ったら、うつむいていた弥生さんがぽそりと口を開いた。
俺には、その声が小さなゴングに聞こえたんだ。

「はい? なんですか?」

「先生は、民主主義に賛成なのかと聞いています」

弥生さんの声が、いくらか大きくなった。俺は確信する。なにかが始まると。

「当たり前でしょう。私は社会科の教員ですからね。民主主義は私たちがこの地にやってくるはるか昔から社会の基盤……」

「だったら!」

ついに、弥生さんが叫んだ。可愛らしい耳が、興奮のせいかピンと上を向いている。

「学校のみんなが認めてくれたら、エスケープ団の活動を継続して良いってことですよね! その証明に、わたしたちは1ヶ月以内に、この町の海王ホールを超満員にしてライブを成功させてみせます!」

「何を言い出すのかと思えば、海王ホールはキャパ3000人の大ホールですよ。あなたたちみたいな高校生に、そんなことができるわけないでしょ」

俺が止めに入る間もなく、弥生さんはスタスタと教頭に詰め寄る。こうなったら手が付けられないことくらい、俺にもよく分かった。

「できるわけないと思うなら約束してください。成功すれば、エスケープ団を存続させてもよいとーー」

「ふん、できるものならやってみなさい」

俺はすっかり言葉を失っていた。いったい何に巻き込まれているんだろうか。よく分からないが、なにやらとんでもないことが起ころうとしているだけはたしかだ。

教頭が去ると、部室(最前、不法占拠していることが白日の下にさらされた)は沈黙に包まれた。

俺は耐えかねて口を開く。

「弥生さん、海王ホールでなにをするつもりなんですか?」

「そうね、思い付きで言ってみたんだけど、アイドルなんてどう?? あ、永遠くんはプロデューサーね」

弥生さん、やっぱりあんたはこの惑星のナンバーワンだ。

廊下を見ると、俺の数奇な運命をあざ笑うかのように、さきほどの猫が駆け回っていた。
         ※ ※ ※



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