過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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186:1[sage saga]
2010/09/15(水) 17:08:35.98 ID:T3JLIYMo
 残されたダルクは、杖の先で注意深く足場を探った。
 先に進むにつれ、どんどん道幅が狭くなっている。
 人型モンスターが普通に通ろうとするなら、大柄な体格ではまず無理。
 火霊使いが自分と同じく小柄らしいことを知り、いくばくか安堵するダルク。

 切り立った斜面の底には、岩々の小さな裂け目――天然の赤い照明が遠くちらついていた。
 が、背景にはその明かりをも飲み込むかのような常闇の深淵が、途方もない存在感で広がっている。
 もし滑落したらタダでは済まないだろう。ダルクのような例外を除いては。

「……あぁ、でもタオル一枚じゃまずいな……」

 そのとき、探りを終えた使い魔がパタパタと舞い戻ってきた。
 思いのほか早い帰還だ。まぁ飛ぶ分に関してはそう遠くないのだろう。

「どうだった?」

 ディーの仕草によると、やはり火霊使いはこの先にいるらしい。
 幸いまだ入浴中だそうだ。
 小話できる時間はあるかもしれない。

「よし、いると分かれば急ぐのみ」

 ダルクは杖で足元を確かめつつ、増して急ぎ気味にガケ道を進んでいった。

 それにしても先刻も疑問に思ったが、彼は何だってこんな険しい道を進む必要があるのだろう。
 壺魔人の洞穴を出たところにだって、山ほど温泉が点在してるというのに。

 真っ先に思いついた理由は、自分と同じく自らの体格にコンプレックスを抱いているから。
 誰かに見られたくないがために、あえて人気の少ない場所を選んで入浴。ごく自然な着想。

 ――でもないな。
 壺魔人は彼のことを『常連』と言っていた。
 何度もこの山道を往復していて、逞しい体つきが得られないはずはない。
 
 単に裸体を見られるのが恥ずかしいだけ?
 まだ若年だから戦士族に混じるのは気が引ける? 
 どれも今まで知りえてきた炎属性モンスターの気性にそぐわないが――。

 じゃあ他に考えられる理由は。
 この先に特別な秘湯でもあるのか? 使い魔の都合?
 ま、まさか日頃から崖っぷちを渡ることで鍛錬の一環としているのか?
 それが一番しっくりくるぞ……。

「……少し自信なくなってきたな……」

 心身ともに熟達した火霊使いを想像し、これまでの意気込みに陰りが差す。
 そんな心象を表現するかのように、道幅はいよいよ狭くなっていった。



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