695:1[sage saga]
2011/09/15(木) 15:23:55.13 ID:yzwl6tpxo
ダルクとアウスは酒場から出て階段を上り、通りに出た。
ダルクはぎょっとする。そこにはもう一人のライトロードがいた。
間違いない、最初に酒場から出た黒髪のライトロードだ。
彼女はレンガの壁に背もたれて、退屈そうに杖をいじっている。
こんなところで何をやっているのだろう。
何にせよ、下の酒場で強硬手段を取らなくてよかった。
まさか本当に外でライトロードが待ち構えているとは思わなかったから。
「……」
「……」
彼女は二人の霊使いの姿を一瞥したが、何も言わずに杖いじりを続けた。
ほっとはするものの、これで注意の的となったかもしれない。
この酒場は町の入り口付近にあり、町を出るなら右手へ、奥に進むなら左手に向かわなければならない。
つまりダルクとアウスがそれぞれの住まいに帰るなら、いきなり別れることになる。
ライトロードの目の前でそうするのは抵抗がある。
さきほどジェインには「アウスの家を間借りさせてもらっている」とウソをついたばかりだ。
「ついてきて下さい」
と素早くアウスが囁かなければ、きっとライトロードの眼前で立ち往生していた。
ダルクはありがたいとばかりに、流れるようにアウスの後を追って左手に進んだ。
そのとき、黒髪のライトロードから小さな嘆息が聞こえた。
思わず振り返りかけたが、結局何事もなかった。
なにか彼女なりに悩みでも抱え込んでいたのだろうか。
その後ダルクは、ひたすらアウスの背中についていった。
入り組んだ町並みを右へ左へ折れ曲がり、ざっと十五分は歩き通す。
ダルクは道のりを必死で覚えようとしたが、一度背後を振り返って無理だと悟った。
前と後ろで景観が違いすぎる。これは一人では帰れない。
ダルクとしては、なるべく誰かに道を尋ねまわるのは避けたい立場だった。
「ア、アウス――」
「着きました」
「!」
飛びぬけて大きな建物だった。
幅はダルクの家を五つ繋げても足りず、高さはバカみたいに分厚い階層が三階分ある。
全体の印象として派手さはなく、代わりに滲みでるような格調高さが満たされていた。
街路のものとは違う、高級そうな石貼りが地面に伸びている。
続いて荘厳な扉と、意匠の凝った飾りつけが来るものを迎える。
「これが図書館……」
それもただの図書館ではなく、建物それ自体から魔力を感じる。
決して乱れることのない、山のように堂々とした重厚な魔力――『地』の魔力が息づいている。
今が夜であるせいか、まるで巨大なモンスターが穏やかな眠りについているかのようだった。
「この町で最大の図書館、通称『魔法図書館』です」
唖然とするダルクに、アウスは心なしか満足げだった。
「こちらです」
門を通り過ぎる背中を慌てて追うダルク。
二人はそのまま図書館の外周をぐるりと回り、裏手口の方へと進んだ。
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