7:1[sage]
2010/05/30(日) 02:39:23.48 ID:1o/NXgko
小一時間ほど歩いただろうか。
寝静まった木々が次第にまばらになっていき、ある地点で唐突に視界がひらけた。
(……あった)
泉だ。
中央に満月を漂わせた、思わず息をのむほど絶景の泉が広がっている。
夜間特有の神秘的な水のゆらめきが、見ている側の心の奥底まで溶け込んでいくようだ。
埋め立てれば屋敷ぐらい建てられそうなほど、泉はなかなか広かった。
これだけの面積を有し、水量も淵まで湛えている泉なら、そう簡単に枯れることもないだろう。
(水質も調べてみよう……)
ダルクは茂みを伝うようにしてほとりに近寄った。
肩に乗っている使い魔は、主人の言いつけ通り動かずにいたが、今にも飛び出したいのをこらえているのが解る。
見た限りは大人しくて利口でも、その内は好奇心に飢えた子供なのだ。
ダルクが「よし、好きに飛んでいいぞ」と言いかけた瞬間だった。
(! ま、待て!)
何かいる――!
ダルクは慌てて息を押し殺し、使い魔ともども自身の気配を薄めた。
ゆっくりとその場に座り込み、茂み越しに泉の端を凝視する。
果たして見間違えではなかった。
この場からそう離れていない水辺で、何者かの黒い影が動いている――。
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