過去ログ - 一方通行「打ち止めが高校に入学すンだが……」
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2012/06/10(日) 22:37:13.76 ID:jSNl8Mer0
味気なくかみ応えに欠けるわりに、栄養価のやたら高い病人食を給仕され、翌日になっても無理なようなら点滴を取りに来るように指示されて、タクシーに乗り込んだ。
寄り添って座る傍らの少女が、横になるかと問うてくるが、大丈夫だと身振りで断る。気遣ってか、いつものマシンガントークが鳴りをひそめられているせいで、タクシー内は随分と静かである。
半月の間元の保護者の所にいた彼女は、交わしたメールによると炊飯器レシピを更に増やし、子守もしたので体力もアップしたらしいが、見た目はさして変化していない。
それでもこれだけの期間顔を合わせなかったのは久しぶりなので、なんだか違和感が残る。重ねられた手のひらは格段に彼女の方が温かく、冷えた指先にじんわりと熱がともるのだ、心地良かった。
さて帰宅して早々、一方通行をベッドの上に追い立てて、くるくると動き回った打ち止めは、十分後にはさしあたって入りようなものを彼の部屋に勢揃いさせた。
しばし寝込む彼女にしてみれば、それくらいは朝飯前なのである。
「うーん、でもあなたが体調不良って久しぶりかも、ってミサカはミサカはもやしっ子から平均男性にジョブチェンジしたあなたに感心してみる」
うるせェ黙れ、と制そうとしたが、声が出ないので諦めた。能力を失った当初こそ、能力やら免疫やらの関係で体調を崩すことが多かった一方通行だが、人並みに体力その他がつき始めてからはその回数はがくんと減った。
食事や生活のスタイルが改善されたのも功を奏したのだろう。それに、自己管理が悪いと窘められたが、同居するようになってからは彼女の健康管理にも気を配る関係で、それなりに気をつけてはいたのである。
「お腹足りた? って――ああ、大丈夫なのね? ってミサカはミサカは確認してみたり。でもゲコ太先生曰く、内臓が弱ってるらしいから、暫くは消化の良いものにしなさいって言ってたよ、ってミサカはミサカは炊飯器の圧力効果で柔らかーく煮崩れさせる機能をフル活用する時代の幕開けを告げてみる」
微妙な表情の変化を読み取ってか、途中から彼女はくすくすと小さな笑いを零している。意思疎通が馴染んだ相手だと汲み取られやすくて便利だ。
寝る、と口の動きで告げると、了承の返事をもらった。しっかり休んでねと、また頭を撫でられる。そういった振る舞いだけ切り取れば、どう考えても向こうが年長のように見えてしまう。
ぼんやりと、コレは良い母親になるだろうと感じたところで、その性質の悪い思考に、一方通行は眉を顰める。今の頭はどう贔屓目に見ても回っていない。
呼びかけの言葉を、と口を動かしたところで、ふと相手の反応がないことに気付く。
着替えた服を畳む打ち止めの視線はこちらにない。なるほど、声が出せない状況ではそれが普通のことかと思い当たる。あまりにスムーズにコミュニケーションが進んでいたので、そんなことを意識の外にしてしまっていたらしい。
それに気付いた途端に、無性に寂しいような気分に駆られた。一つ不自由を感じてしまうと、それは連鎖的に繋がっていくものである。
見るとも無しに見ていた先の彼女は、畳み終えた服を腕に抱えている。
「それじゃあミサカ行くから、ゆっくり寝ててね、ってミサカはミサカはお疲れモードなあなたに優しく語りかけてみたり。おやすみなさい」
子どもにするような柔らかい口付けが、額に落とされた。笑みを浮かべた彼女は少し乱れた前髪を手早く直す。
もう一度おやすみなさいと呼びかけて、バイバイと手を振って踵を返した打ち止めの背に、一方通行もつられたようにして就寝の挨拶をしてみるが、それは全く届くことはない。
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