過去ログ - 唯「まじーん、ごー!」
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184:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2010/11/08(月) 17:11:49.33 ID:.hdXSK20

 九尾の狐の守護霊を持つ観月は人一倍霊感に鋭く、その影響を受けやすい。人の魂の行き着く場所とされているバイストン・ウェルからやってきたオーラ力にあてられてしまったのである。
 気が強いが、それ以上に家族の身を心配するゆえに熱くなる氷柱だが、乱れた呼吸を繰り返す観月にさすがにクールダウンした。それを見計らって蛍と一緒に観月を看ていた三女の春風が優しく声をかけた。

春風「ねぇ、氷柱ちゃん。氷柱ちゃんがすごくみんなのことを想ってくれているのはとてもよくわかるわ。海晴お姉ちゃんに霙ちゃん、ヒカルちゃんと立夏ちゃん……春風だってすごく心配だもの……いなくなっちゃうのはイヤ……でも、ママがもっと心配したのは、みんなが本当の意味でばらばらになっちゃうことなの……」

氷柱「は、春風姉様……」

 春風の言いたいことが、氷柱にはわかった。現在は歴史が大きく動こうとしている時代なのだ。その世界で、ただそこにあるだけで奇跡のような十九人姉妹が、いつ引き裂かれるのかわからない。
 だから、彼女たちのママは――

霙「私たちはなにも死ににいく訳じゃないさ、氷柱」

氷柱「霙姉様……」

 ここまでずっと一言も喋ることがなかった霙の声音は、この場で最も意味のあるものとなった。

霙「とどのつまりは、ここに帰ってくるために、少し長く家を空けるだけさ」

氷柱「そ、そんなこと言ったって……か、かえっ」

 それ以上は氷柱の喉から出てこなかった。そこから先のことを想像するだけで心臓が張り裂けそうになる。

海晴「氷柱ちゃん」

 端正な顔がぐしゃぐしゃになるのを必死で止める妹を、長女の海晴がそっと抱きしめた。何度こうして抱擁されたことだろう。そして、これから何度こうしていられるのだろう……

氷柱「海晴姉様……」

海晴「私たちが出かけるのは遠い場所かもしれない。でも、帰るおうちがないと、私たちもがんばれないわ。だから、氷柱ちゃんはここでみんなを守ってね。春風ちゃんと蛍ちゃんだけじゃ、ちょっと頼りないからね」

氷柱「……はい」

 氷柱がその夜、何年ぶりかの大泣きをしたのをヒカルは知っていた。午前三時、こっそりと家を出ようとしたヒカルたちを家族全員が起きてきて盛大に見送られた。そのために、氷柱が全員をたたき起こして自分の部屋に集めていたこともすぐに気づいた。



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