606:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/02/24(木) 18:32:53.12 ID:Li68PeD/0
中国 ホワイトベース
長門「…………」
ヒカル「……なぁ、そろそろ、少しは話してくれてもいいじゃないか?」
スズ「せめて、名前くらいは教えてください」
長門「…………」
ヒカル・スズ「はぁ……」
ヒカルとスズのため息を別室のカメラとマイク越しに見ていた天使霙、天草シノ、そしてホワイトベース艦長代理の香月シノンも疲れた表情を隠さなかった。
捕虜にしたときの身分証から長門有希という名前はわかっていたが、それを自分の口で言ってもらうことで、会話のきっかけにもなる。
シノ「もう、二十八時間が経過か」
霙「捕らえてからここまで、一言も喋りもしなければ眠りもしない。もちろん、体力が落ちているような顔色もない」
シノン「ある意味、理想の軍人ね」
シノ「まさかとは思いますが、強化人間というものでしょうか?」
桜才学園生徒会長も、この面子に入れば年少である。緊張の中、一種のタブーに触れたシノの背中に汗が流れる。
霙「よく知っているな。コロニーは情報規制が強いはずだが」
シノ「アングラの出版物です」
霙「ほう、コロニーにもアングラはあるのか。人の口に戸は立てられないということか」
霙が愉快だという具合に喉を鳴らす。この会話だけでも下手をすれば処罰ものである。
つい先日まで民間人だったシノにそれを笑う度胸はなかった。
霙「だが、ギガノスに強化人間の実験をする機関はないはずだ。元々、強化人間といっても肉体の外科的手術をするわけではない。薬物の投与などによって認識能力を高めたり、精神を不安定にして他人がコントロールしやすくするものだ」
シノン「人によっては鬱状態になることもあるらしいけれど、この子にその気配は見られないわね。検査でも正常値だし、血色もいいわ」
霙「むしろ私は、作り物のような印象を感じたな」
シノ「作り物……ですか?」
霙「あぁ、ウチには吹雪っていう無口なやつがいてな。立夏はロボットみたいと茶化すこともあったが、それでも彼女ほどではない。そうだな、人形といってもいいかもしれないな」
シノン「クローン人間……の可能性もあるかもしれないわね」
この手の噂はどこでも耳にするものだ。例えば、ジオン独立宣言からアングラで支持を集めている話題が『ジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ発言』である。
「人類は本来、宇宙に進出する資質を持って地球に生まれたのであり、スペースコロニーは、地球の代替品ではなく、人類がさらに進化する新たな大地である」
これがジオン・ズム・ダイクンの主張するところであり、進化した人類を『ニュータイプ』と呼んだ。
また、ジオン公国には密かに建造されたニュータイプの可能性があるものを集めて教育を施す『学園都市』と呼ばれるコロニーがあるなど、情報の信憑性など二の次三の次であるアングラはありきたりに飽いたコロニー民にとっては一種の娯楽である。
学園都市の噂にも多くのものがある。
『あの中ではニュータイプだけではなく、超能力者を使う開発行為が行われている』
『時間の流れが遅く、外の一年が中では七年である』
『クローンの研究も盛んで、二万体の妹達≠ニいう兵隊が生産されている』
これらの技術がジオンにあるはずはないというのがもっぱらのレスポンスだが、時折ジオンの元研究者を名乗るものが証拠画像を出したりと、その度にコロニー民は強い熱を発していた。
そして、その度に警邏が弾圧行為を行っていることも、隠れた常識であった。
霙「どちらにせよ、彼女を上層部に報告するのはよしたほうがいいだろうな。戦局がジオン・ギガノス寄りな現在、南極条約はあってないようなものだからな」
長門「…………」
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