21:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:32:06.13 ID:PWoHFWY0
次の日、俺は澪姉にさっそくメールを送ってみたのだが何時まで経っても返ってこなかった。電話をしても繋がらない。嫌な予感がして、俺は澪姉の家に直接尋ねようと思ったが、へタレな俺は情けない事に、事実を知るのが怖くて行けなかった。姉ちゃんも訝しげに思って俺が止めるのも聞かずに秋山宅に行ったようだが、どうやらおばさんに、はぐらかされた様だった。
その澪姉から、突然のメールが届いたのは最後に逢ってから一週間後。発信先は月軌道上のリシティア号の艦内からだった・・・。
22:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:37:50.22 ID:PWoHFWY0
2012年4月
3,2,1、・・・0!発射!
23:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:39:52.73 ID:PWoHFWY0
<やっぱり実践方式だと難しいな・・・>
訓練が終了して、私は火星基地内のシャワー室でシャワーを浴びながら溜息交じりに心の中で呟く。
ここに来る前の月面基地ではコンピューターでのシミュレーションも何度もこなしたし、実際にトレーサーを起動させて、基本動作も習得し、シミュレーションでもそれなりの結果を出す事が出来るようになった。けど、やはり仮想とはいえ実際に敵がいる中での戦闘は勝手が違っていた。今回の訓練では三体中二体に命中させられたものの、こちらの武器はミサイルだけだったとはいえ、仮想タルシアンは武装なし反撃なし回避のみという条件だったにもかかわらず、やっぱりシミュレーションの様にはいかなかった。
24:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:41:16.07 ID:PWoHFWY0
食堂には既にたくさんの人がいた。テーブルには私と同じくらいの女の子達が、既に食事を終えてお喋りをしていたり、黙々とケータイをいじっていたり思い思いの食事の時間を過ごしていた。私は殆ど学食で食事をした事が無かったので、女子校の学食はこんな感じなんだろうな、と、ふと思った。
私は支給されたIDカードをセンサーにかざし、カウンターから食事を載せたトレーを受け取るときょろきょろと食堂を見回す。
「秋山さんっ、こっち、こっちよ!」
25:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:45:18.36 ID:PWoHFWY0
曽我部恵先輩。彼女は桜ケ丘高校の一つ上だった先輩で、和の先代の生徒会長だった人だ。明るい茶色のロングの髪、つり目気味で、理知的なすっとした顔立ちは、私の一つ上とは思えない程、きれいで大人びた印象を受けた。今は、私の志望校だった女子大の学生で、休学して選抜調査隊に入隊している。
あの和にして、聡明な印象(イメージ)を抱く程の人ではあるが、何故か文化祭で私たちのライブを観て私をいたく気に入ったらしく、私のファンクラブを立ち上げた挙句、卒業が近づくと、別れるのが名残惜しいからと、私にストーカーまがいの事をする様な人なのだった(ちなみに後任のファンクラブの会長を和に押しつけている)。
だけど、そのお陰で右も左も判らない、知り合いもいないと思われたクルーの中で声を掛けてくれた事は、人見知りの私にとって本当に有り難い事でとても感謝をしている。
26:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:47:58.57 ID:PWoHFWY0
「いただきます」
今日の夕食(火星に朝、昼、夜があるのかはよく判らないが)は御飯に豆腐のお味噌汁、里芋の味噌和えに金平ごぼう、といった紛う事なき和食の献立だった。火星基地(ここ)での食事は和食が多かった。リシティアの乗組員(クルー)約百三十人の内の大半は日本人(私や曽我部先輩の様な選抜トレーサー組みは百人全員)だからかな。そして、トレーサー乗り百人は全員女性だった。
27:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:51:02.89 ID:PWoHFWY0
「うん、やっぱりここの野菜はおいしいわね、最初、純火星産で水耕栽培って聞いてどうかと思ったけど、やっぱり技術の進歩って凄いわね。もしかしたら有機野菜より美味しいかもしれない」
里芋を箸でつまみながら、曽我部先輩は感嘆の声を上げる。
確かに食事はおいしかった。でもお菓子やデザートの類はあるにはあるのだが、正直に言ってそんなに美味しくは感じられなかった。やっぱりお菓子に関しては軽音部で食べていた、ムギの持って来るお菓子に舌が慣れてしまったのだろうか。ふとムギのお菓子が食べたくなると同時に、あのほんわかした雰囲気の少女の顔を思い出す。とは言ってもちょくちょくメールのやり取りをしているのだが、彼女たちと会えない時間と距離が私を少し感傷的にさせた。
28:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:55:37.80 ID:PWoHFWY0
「秋山さんそれで訓練の方はどう?中々調子がいいみたいに見えたけど。三回中二回も命中させていたみたいだし」
「・・・あっ、はいそうですね」
ぼうっとムギたちの事を思い出していたところに声を掛けられた私は、はっとなって取り合えず相槌を打った。
29:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:59:34.02 ID:PWoHFWY0
「そう、秋山さんがそういうならしょうがないわね。ところで大好きな聡君とはどうなの?ちゃんと連絡(メール)し合ってる?」
「えっ?・・・あの、その・・・まぁ、それなり、には・・・///」
不意に聡の話題を振られて(不意でなかったとしても)私はしどろもどろになってしまい最後の方は消え入りそうな声になってしまった。
30:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 06:01:02.50 ID:PWoHFWY0
「でも、秋山さんに彼氏かぁ・・・聡君て確か軽音部の田井中さんの弟さんなのよね。でも、桜高のアイドル秋山澪ちゃんを彼女に出来るなんて、一体どんな子なのかしら」
「アイドルって・・・なに訳の分からない事を言ってるんですか。そ、それに聡は彼氏と言っても弟みたいなものです。ただ、優しくて、私の事を慕ってくれて、時々カッコ良いと思える時がある位で・・・」
「あらあらそうなの。御馳走さま。・・・ふふ、やっぱりいい人みたいね。大事にされてるのね」
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