54:こーじろう侍[sage]
2010/12/01(水) 05:00:07.24 ID:DhwUcOA0
私は今、冥王星にいる。これまでの訓練で、トレーサーの操縦をほぼマスターした私達のここでの任務は、ショートカット・アンカーの探索とタルシアンの監視だった。とは言っても、探索、索敵そのものはトレーサー内蔵のコンピューターがやってくれるので、私達がやる事と言えば、気になった所を自由に飛び回る位なのだが、私達はこれを艦ごとに3班に分けて、8時間交代で行っていた。
「また、聡君の事を考えていたんでしょ」
先輩には珍しい少し非難する様な声だった。
「そ、そんな事、考えてませんよ!」
図星だったけど、流石に恥ずかしくて、肯定する事は出来なかった。
「どうかしら、このところ頻繁にメールしてるみたいだし。あ、そうだ任務が終了して地球に帰ったら、聡君と田井中さんに言ってあげようかしら、秋山 澪さんは大事な任務中に聡君とのいちゃいちゃラブラブなふわふわDream時間を妄想してましたって」
「せ、先輩のいじわる・・・」
「冗談よ。まあ、正直に言って、私達が飛び回って捜したところで、ショートカット・アンカーなんかそう簡単に見つからないでしょうし、今のところタルシアンだって出てきそうにないもの。探索を兼ねたストレス解消と思えば、少しくらい気を抜いても良いと思うけど、あんまり抜き過ぎても駄目よ。秋山さんただでさえ、この所ぼうっとしてる事が多いみたいだし」
「そ、そんな事・・・」
言いかけて私は口ごもる。確かに最近は特に不安になったり、聡の事を考えてしまう事が多くなった。時折、無性に聡や律達に逢いたくなって仕方なくなる事もあった。宇宙に出て一年以上経つというのに、今迄で一番強いホームシックに罹ってしまったのかもしれない。
だが、そうなってしまったきっかけを作ったのは、明らかに火星での食事の時の曽我部先輩との会話からだったのだが、今こうして私に注意している当の本人は、そんな事、微塵も感じていないだろうな・・・。
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