過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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335:上条と真紅 ◆zEntDqWLlc[sage saga]
2010/07/26(月) 02:18:07.50 ID:46.faFwo

「え?」

「……」

 聞き返す上条に、無言のまま歩み寄る姫神。長い黒髪がその動きを追い、サラリと揺れる。

 彼女は上条の目の前に立つと、左手を持ち上げて彼の頬に触れた。

 すっ、と姫神の指の腹が、上条の頬を撫でる。

「ひ、姫神?」

 思わぬ接近に、上条の声が上擦った。

 姫神は彼の動揺を気にせず、続ける。

「上条くんは。いつだって無茶をしてる。……いつだって怪我をしてる」

 姫神の身長はインデックスとそう変わらない。年齢的にも同じくらいだろう。

 にも関わらず、白い少女よりもずっとはかない存在であるように思えるのは、彼女が身に纏った雰囲気ゆえか、それとも彼女の過去を断片的にでも知るゆえか。

「いや、そんな無茶は「してる」

 言葉尻を食いつぶし、姫神が言う。見上げてくる彼女の瞳は、こぼれ落ちそうなほど心配を湛えていた。

「……」

 上条には過去の記憶がない。

 この夏休みの途中からが、いまの彼の全てである。そういう意味では、姫神は上条にとって初めてゼロから知り合った存在と言える。

 その姫神の目に無茶をしていると映るのであれば、それは本当にいまの上条が無茶をしているということの証明でもあった。 

「・・・・・・」

 姫神は上条の頬から手を離す。その手はそのまま上条の腕を伝い――――右手に触れた。


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