過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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上条と真紅
◆zEntDqWLlc
[sage saga]
2010/07/26(月) 02:22:03.67 ID:46.faFwo
「あっ、と…」
「……」
姫神は何も言わず、そしてそれ以上踏み込むことなく。
しかしゆっくりと、鎖が絡んだ右手を持ち上げる。
チャリ、と、再び鎖が鳴いた。
長い後ろ髪が鎖の輪にかかり、一度だけ持ち上がり、ふわり、と先ほどよりも大きく、髪の軌跡が夜の中に閃いた。
「お、おい姫神、お前それを外したら・・・…」
「大丈夫。いまは。貴方の右手に触れているから」
再び上条の声を遮り、姫神は首から外した十字架を見る――――彼から、視線を逸らす。
だから、はなさないでほしい。
そこだけは言葉に出さず、幻想殺しを、否、彼の手を握る自分の左手に、少しだけ力をこめた。
「……」
見上げてくる彼女の瞳は、上条の頬に僅かについた擦り傷に向いている。先の言葉どおりの、不安の灯った瞳が。
「……」
それを見た上条が、僅かに息を呑んだ。元々口数の少ない彼女の瞳は、逆にそれがゆえにたった一つのことを雄弁に物語る。
そして彼女がどんな言葉を求めているのかは、流石に上条も理解できた。
「……」
上条は一度目を閉じる。そして、
「大丈夫だ」
幻想殺しで――――いや、己自身の右手で、しっかりと小さくに震える姫神の手を握り返した。
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