過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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337:上条と真紅 ◆zEntDqWLlc[sage saga]
2010/07/26(月) 02:22:03.67 ID:46.faFwo

「あっ、と…」

「……」

 姫神は何も言わず、そしてそれ以上踏み込むことなく。

 しかしゆっくりと、鎖が絡んだ右手を持ち上げる。

 チャリ、と、再び鎖が鳴いた。

 長い後ろ髪が鎖の輪にかかり、一度だけ持ち上がり、ふわり、と先ほどよりも大きく、髪の軌跡が夜の中に閃いた。

「お、おい姫神、お前それを外したら・・・…」

「大丈夫。いまは。貴方の右手に触れているから」

 再び上条の声を遮り、姫神は首から外した十字架を見る――――彼から、視線を逸らす。

 だから、はなさないでほしい。

 そこだけは言葉に出さず、幻想殺しを、否、彼の手を握る自分の左手に、少しだけ力をこめた。

「……」

 見上げてくる彼女の瞳は、上条の頬に僅かについた擦り傷に向いている。先の言葉どおりの、不安の灯った瞳が。

「……」

 それを見た上条が、僅かに息を呑んだ。元々口数の少ない彼女の瞳は、逆にそれがゆえにたった一つのことを雄弁に物語る。

 そして彼女がどんな言葉を求めているのかは、流石に上条も理解できた。

「……」

 上条は一度目を閉じる。そして、

「大丈夫だ」

 幻想殺しで――――いや、己自身の右手で、しっかりと小さくに震える姫神の手を握り返した。


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