過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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428:上条と真紅 ◆zEntDqWLlc[sage saga]
2010/12/20(月) 00:07:25.77 ID:Rs5RHhoo



 まだ人通りの少ない午前中の道を、姫神は難しい顔をして歩いていた。

 上条との待ち合わせ場所に急ぐ道中。

 晩夏というよりも初秋に相応しそうな長袖ブラウスにノースリーブワンピース姿の彼女の歩調は、普段よりもやや遅い。

 女子寮からバス停まではそう遠くない。また、道も複雑ではない。

 自然、考え事をするだけの余裕が生まれる。



『無念。ローゼンの最高傑作である薔薇はもう昇華されていた。別の手を考えなければならない』



「……」

 姫神の頭の中に、いつぞや聞いた言葉が、そして昨日思い出した言葉がリフレインする。

 昨夜―――公園での上条との会話の後、結局、薔薇乙女への疑念を彼に告げることはできなかった。

 上条は本人が意識しているかどうかはともかく、信頼と言うものを支えの一つとしている。それにわざわざ亀裂を入れることが、果たして正しいことなのか姫神には判断できなかったせいである。

 あるいは、このことを話しても、上条はあの紅い薔薇乙女に疑念を抱くことはないかもしれない。

 しかし上条は自分も信じてくれている、と思う。

 その自分が真紅を、薔薇乙女を疑っているとわかれば、彼はどうするだろうか。

 無用な疑念を抱かせることは、彼を危険な状況に陥れる可能性すらあるのだ。

 危険だ、と思う。

 だがそれでも、彼の信じるものを否定したくはないとも思う。

 板挟みという状況下において、不安の根拠が、結果的に敵対した人間の言葉のみというのは、あまりにも弱い。


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