過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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559:上条と真紅 ◆zEntDqWLlc[sage saga]
2011/12/03(土) 17:35:52.65 ID:Mpqpbi4Ho
「大丈夫ですの」と、白井。

「え……」

「わたくしたちが、必ず捕まえてみせます。絶対、逃がしてはおきません」

 真っ直ぐ正面を見据え、白井が断言した。

「……」

 ぽかん、と初春が白井を見る。

 それはなんの根拠もない言葉だ。手掛かりもなく、いたずらに犠牲者が増えるだけの中、気休めにもならない文字の羅列に過ぎない。

 もちろんそんなことは白井にだってわかっている。いやむしろ、こう言った根拠のないことを口にすることは、彼女の矜持に反する――とまではいかないが、そぐわないものだ。

 しかし、彼女の瞳が語るのは、また別の言葉。

 諦めないのは当然だ。手掛かりがないなら、探し出せ。誰かが襲われるならば、身をていして助けろ。

 一片の諦観だって抱いてはいけない。それは土壇場で、己を殺す刃と化す。

 自分を護れ。何よりも、大切に想うモノ全てを、護るために。

 白井は、そう言っている。

 「そうですね。そうですよね」初春が、ゆっくりと笑顔を浮かべた。

 自身のもっとも得意とする分野で、完全な空振りが続いていることが、自信を揺らがせていたらしい。

 見つからない、と思っていては、見えるはずのモノも見えなくなってしまう。何があっても、よい方向へ進める意思を失ってはいけないのだ。

「ありがとうございます、白井さん。ちょっと弱気になってたみたいです」と、初春が言った。

「お礼を言われるようなことではありませんの」

 一方の白井は、腕を組んで、つい、と目を逸らす。何気ない仕草を装っているが、照れて赤く染まった頬を隠そうとしていることは明白である。

 らしくないことを言ってしまった。しかも、

(……わたくしも少々、あの方に毒されましたか)

 4トンを超える瓦礫を跳ね退け、自分を助けるに至った彼。そのとき耳にした単純極まりない彼の動機にここまで影響があるとは、なるほど、美琴がノボセテしまうのも無理はない。

(もっとも、だからと言って容認するつもりはありませんけれど)

 それなりに認める気持ちはあれども、それとこれとは話が別である。


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