過去ログ - 智「さあ、おとぎ話をはじめよう」
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999:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/10/03(月) 02:05:33.16 ID:yJdPesPho
智「……そうそう、今日は十五夜だからね、お土産に月見団子をもってきたんだ。浜江さんの手を借りながらだけど、僕が作ったんだよ」

 本を見ながらなら一人でも作れるけれど、姉さんにあげるのなら生半可なものでは駄目だ。
 だから厳しい審査をくぐり抜けて、僕は姉さんへの月見団子を作った。
 プラスチックの容器に入った団子は合計10つ。
 おみやげとは称したけれど、半分ずつ。
 僕は一つ、無言でそれを食べて、飲み込む。

智「……ほら、姉さん。月が綺麗だよ」

 二つ目を食べながら、窓の外を見る。
 都会にしては珍しく、空も星も綺麗なぐらいに輝いていた。
 そして、丸く光る、満月も。

智「僕、いつか姉さんとどこか静かな場所で月見したいな」

 それは願望だ。
 いつ叶うかもわからない、願いに違いない。
 そんな未来を引き寄せる力も、僕にはもうない。

 どうこうしているうちに、半分の五つを食べ終えてしまう。
 けれど僕は帰らない。
 だって――そう。まだ僕は姉さんを諦めてなんかいないのだから。

智「姉さん。こんな綺麗な月の日には、物語でも語ろうかと思うんだけど、どうかな?」

 返事は勿論ない。
 けれど、姉さんは『いいわね』と言ったような気がした。
 だから僕は語りだす。

 ありえなかった未来、ありえなかった過程、ありえなかった結末――
 全てがもはや過去となってしまっている、夢物語。
 曰く――――おとぎ話を。


智「さあ、おとぎ話をはじめよう」


 皆を、姉さんを何もかも掬うため。
 僕はまた、あらゆる、見果てぬ可能性のある夢物語を語る――――


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